コビントン・バーリング法律事務所より、11月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) BISが関連会社に対するエンドユーザー規制の範囲の拡大を1年間停止
2) 欧州及び英国におけるテック産業の動向及びM&Aの展望
3) カリフォルニア州によるCCPA規制の改正の承認
4) 巨額訴訟の増加を背景とした超過責任保険(excess general liability
insurance)及びバミューダ・フォーム仲裁の最新動向
5) Better Food Disclosure Act法案の提出
Pick Up
[米国/輸出管理/Affiliates Rule/エンドユーザー規制/BIS]
BISが関連会社に対するエンドユーザー規制の範囲の拡大を1年間停止
Suspended for One Year: U.S. Department of Commerce Expansion of End-User Controls to Cover Affiliates of Certain Listed Entities
2025年11月10日、米国商務省産業安全保障局(BIS )は、One Year Suspension of Expansion of End-User Controls for Affiliates of Certain Listed Entities(Suspension Rule)を公布しました。Suspension Ruleは、2025年9月29日にBISが公布したExpansion of End-User Controls to Cover Affiliates of Certain Listed Entities (Affiliates Rule)により加えられる Export Administration Regulations (EAR)に対するすべての変更を1年間停止するものです。
Affiliates Ruleは、BISエンティティリスト、軍事エンドユーザーリスト(MEUリスト)、及び/又は米国財務省外国資産管理局(OFAC)の特別指定国民及び資格停止者リスト(「SDNリスト」)に掲載されている者によって、直接又は間接的に50%以上所有されている米国外の事業体に対しても、米国輸出管理規則(EAR)上のライセンス要件を適用対象とする規則です。Suspension Ruleにおいて、BISは、1年間の停止期間中においても、当該関連会社に関する米国の安全保障及び外交政策上の利害関係について引き続き評価する旨を表明しています。
Suspension Ruleは、2025年11月1日付のWhite House Fact Sheetに記載のとおり、最近の米中貿易交渉の結果として発出されたものですが、中国に本店又は拠点のある事業体や、それらの企業により直接又は間接的に保有される事業体に限定して適用されるものではありません。
BISによる延長措置が別途なされない限り、2026年11月10日をもって、Affiliates RuleによるEARに対するすべての変更の効力が発生する予定です。
本稿は、2025年10月のMonthly Roundupにてご紹介した「米国商務省、エンドユーザー規制の範囲を関連会社まで拡大」の続報に位置づけられます。
[テクノロジー/M&A/テック規制/欧州・英国]
欧州及び英国におけるテック産業の動向及びM&Aの展望
Part 1: The New Regulatory Landscape for Tech
Part 2: Antitrust/FDI Environment for Tech
Part 3: Recommendations for Tech M&A and Strategic Transactions
テクノロジーに焦点を当てたM&A取引を成功させるにあたっては、当該テクノロジーのみならず、これを取り巻く規制や市場慣行等を理解することが不可欠となります。本稿においては、3回にわたって、欧州及び英国におけるテック取引にあたって留意すべき事項を解説しています。
まず、第1回(テック分野のM&A取引における新たな規制)では、プライバシー及びサイバーセキュリティ、データシェアリング、デジタルマーケット、製造物責任、AIという5つの規制領域に焦点を当てて、具体的に取引にあたってどのような事項を考慮する必要があるかについて検討しています。
次に、第2回(テック分野のM&A取引における競争法/外国投資規制)では、企業結合審査の規制当局が、イノベーションを促進する観点から、テック取引に対して好意的/謙抑的なアプローチを示すようになったこと踏まえ、取引の組成時にどのような対応を取るべきかを検討しています。また欧州各国における外国投資規制の状況についても解説しています。
最後に、第3回(テック分野のM&A取引における推奨事項)では、これらの規制状況を踏まえ、テック関連取引を進める上での実務的なステップについて整理しています。具体的には、規制マッピングを前倒しで行うこと、リスクにフォーカスしたデューデリジェンスを行うこと、テック特有の論点を踏まえてディール条件を検討すべきこと等を解説しています。
[個人情報/プライバシー/カリフォルニア/CCPA]
カリフォルニア州によるCCPA規制の改正の承認
California Finalizes Updates to Existing CCPA Regulations
2025年9月23日、California Privacy Protection Agencyは、既存のCalifornia Consumer Privacy Act (“CCPA”)に関する規制(“既存規制”)のアップデート及びサイバーセキュリティ監査、リスクアセスメント、自動化された意思決定技術(Automated decision making technology)に関する新しい規制が承認された旨を発表しました(詳細はこちらをご確認ください。)。改正された既存規制は、2026年1月1日に施行されますが、これによって、CCPA上の企業・事業主の義務を拡大し、消費者は自身の個人情報をこれまで以上に管理することができるようになります。本稿では、既存規制の改正の内容のうち、①これまで任意であったオプトアウト処理の完了確認の提供義務が追加されたこと、②消費者の知る権利に関して、消費者の個人情報を12か月を超えて保有する場合、消費者が過去12か月より前に収集された情報についても開示請求できるようにする義務が追加されたこと、③プライバシーポリシーにおいて第三者のみでなくサービスプロバイダーに対して直近12か月に開示した個人情報のカテゴリーも特定しなければならなくなったこと、④機微情報(Sensitive Personal Information)の定義が変更されたこと、⑤消費者が機微情報の使用や開示制限を要求できる権利を有していることを消費者に通知しなければならなくなったこと、⑥個人情報取得時やオプトアウトに関連した誘導等(いわゆるダークパターン)に関して企業・事業主に追加された重要な義務について解説しています。
[保険/訴訟/仲裁/超過賠償責任保険/バミューダ・フォーム]
巨額訴訟の増加を背景とした超過賠償責任保険(excess general liability insurance)及びバミューダ・フォーム仲裁の最新動向
Dealing with an Extra Digit: Latest Developments in Excess Liability Insurance Coverage and “Bermuda Form” Arbitrations for Catastrophic Exposures
米国ではここ数年、集団不法行為や製造物責任訴訟の賠償額が巨額化しており(過去5-8年の間に賠償額が従来のものより一桁ドル増えています)、こうした場合、企業は超過賠償責任保険(excess general liability insurance)を利用することになります。しかし、こうした保険は、特有の文言を含むバミューダ・フォームで契約されることが多く、仲裁が非公開かつ米国外(ロンドンやバミューダなど)で行われるため、予測可能性の担保が難しいという課題があります。本稿では、こうした複雑な保険契約の中でも近年認められつつある重要な補償範囲として、主に三つの点を挙げています。第一に、汚染関連損害に対する補償について、従来の汚染除外条項(pollution exclusion)を修正する「Blended Pollution Exclusion」特約により、製品起因の汚染、非意図的な汚染、又は意図的な汚染であってもそれが非意図的な汚染により甚大な被害拡大を防止するために生じたものである場合には、これらによって生じた損害に対しても補償が適用される旨を説明しています。第二に、環境対応費用(response costs。被害範囲の調査費、損害修復費用等)について、これらは「損害(damages)」には当たらないため補償の範囲外である旨を保険会社が主張する例があるものの、今日の仲裁判断ではこれらの費用も補償対象とされる傾向が確立されている点を示しています。第三に、バミューダ・フォームの保険契約において、損害は被保険者が「by reason of judgement or settlement」によって支払いを義務付けられるものと定義されていることを根拠に、被害者との正式な和解契約がなければ、被害者への補償額は補償対象に含まれないとの保険会社の主張に対する、最近の仲裁判断の傾向を分析しています。すなわち、仲裁判断では、この文言は確認的な意味にすぎず、和解契約等の存在が損害賠償を補償対象とするための条件となっているわけではなく、和解契約が存在しない時点における被害者に対する補償金(部分的なものを含む)も保険によって補償される範囲に含まれると判断していることを解説しています。そのほか、本稿では、企業が適切な補償を確保するための「ベストプラクティス」として、①保険を更新する際に弁護士による適切なレビューを受けること、②補償該当事由が生じた場合に適切な通知を適切なタイミングで保険会社に対して行うことを強調しています。
[米国/食品/ライフサイエンス/GRAS]
Better Food Disclosure Act法案の提出
Senator Marshall Proposes an Overhaul of the GRAS Framework
2025年11月6日、アメリカの上院議員によってBetter Food Disclosure Actの法案が提出されました(なお、この法案は州法への優先権が規定されていません。)。この法案は、Federal Food, Drug, and Cosmetic Act(“FDCA”)を改正し、GRAS物質(food substance generally recognized as safe。定義についてはFDCA内のものと同義)であっても、新たに導入されるGRASリストに登録されるか関連当局によって審査中である場合を除いては、当該物質が含まれた食品を、異物が混入した不良品(adulterated)とみなすものです。そのため、この法案が成立し、施行された場合、製造業者は、①既存のGRAS物質については、法案の施行から2年以内に、②新たなGRAS物質については、遅くとも最初に使用する120日前までに、それぞれ米国食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)に対して通知しなければなりません(この点に関する詳細は、法案成立後2年以内にFDAによってルールが制定されることになっています。)。
こうした通知を受領した後、FDAは、180日以内に通知を容認しGRASリストに対象物質を追加するか、通知を拒否することとなっています。なお、FDAによって拒否通知がこの期間内に発せられなければ、対象物質はGRASリストに自動的に追加されます。 さらに、この法案上、FDAは、自主的に、又はCitizen petitionや州政府からの通知をFDAが受け取った場合、添加物の再評価を行うことができ、これによってFDAは添加物をGRASリストから除外できるとされています。こうしたリストからの除外や上記拒否通知を受け取った企業は、①FDAに対して再検討や追加資料を求めるか、②使用許可を求める申請(food additive petition)をするか、③対象物質を使用しない旨の計画を提出することになります。
なお、GRAS物質に関する枠組み改革の検討は、現在多数行われており、Ensuring Safe and Toxic-Free Foods Act of 2025についてはこちらを、FDAがGRAS物質とされている食用物質について、GRAS通知の義務的な提出を求める規則を提出しようとしていることについてはこちらを、これに関連する上院議員の関連法案についてはこちらを、それぞれご確認ください。
News
[5名の弁護士がLaw 360 MVPに選出されました] これは過去1年間に多大な成果を挙げ、各専門分野に最も貢献した弁護士を表彰するもので、コビントンからは下記各分野で5名の弁護士が選出されました。
- International Trade – David Fagan:歴史的な日本製鉄・US スチール取引におけるCFIUS承認の取得のほか, Rio Tinto, Czechoslovak Group 等重要案件においてCFIUS承認を得ました。
- Technology – Emily Henn:プライバシー訴訟においてFullStory, Delta Air Lines, Macy’s, Papa John’s 等名だたるクライアントを成功に導きました。
- Insurance - Cléa Liquard :NFLやSIFMAの保険請求訴訟において有利な判断を勝ち取りました。
- Sports & Betting - Andrew Nightingale:NFLや投資家の代理を通じて、プロスポーツにおけるプライベートエクイティ投資の変革に多大なる貢献をしました。
- International Arbitration - David Pinsky:ウクライナ国営石油・ガス会社によるロシアに対する仲裁判断の執行を主導したほか、同社による欧州全域でのロシア資産の凍結も実現しました。
[2025年の成果につき下記のアワードを受賞しました]
[ASBCA元判事が政府契約プラクティスに加入しました] Elizabeth Witwerは、国防総省、NASA、CIA等連邦機関と政府契約者との間で発生した紛争を審理・裁定する機関であるthe Armed Services Board of Contract Appeals (ASBCA)の行政判事を務めたほか、政府説明責任局(Government Accountability Office, GAO)、司法省、米国陸軍等において15年にわたって政府契約に携わっており、コビントンの政府契約プラクティスが一層強化されます。
[金融サービスプラクティスがさらに強化されました] ボストンオフィスに加入したSamantha Kirbyは金融機関、フィンテック企業、その他の金融サービス企業に対し、M&A、キャピタルマーケッツ、コーポレートガバナンス、SEC対応、銀行規制等につき戦略的アドバイスを提供しており、Randy Benjenkとともに金融サービスプラクティスの共同代表を務めます。
[元FDA高官Jessica Muがコビントンに加入しました] Muは25年以上にわたり、米国食品医薬品局(FDA)、特にコンプライアンス及び規制関連分野でリーダーシップを発揮しており、コビントンにおいても貴重な知見とガイダンスを提供します。
[EU競争法プラクティスにフランス資格を有するCharlotte Simphalが加わりました] Simphalは欧州委員会および世界各国の競争当局における合併規制やカルテル調査に豊富な経験を有しており、ライフサイエンス、テクノロジー、化学、食品、海運、エネルギーなど幅広い業界のクライアントを代理しています。
[日本育ちのボストンオフィスパートナーMegan Gatesがボストン日本協会ウェブサイトで紹介されました] Gatesはライフサイエンス業界を中心に資金調達やM&A並びにSEC対応に関するアドバイスを提供しており、定期的に日本を訪問しています。
Webinars
開催済のWebinarもOn Demand配信をしている場合がありますので登録ボタンからご確認下さい。なお、配信は予告なく終了されますのでご了承下さい。Webinar に関するご質問や録画その他のご要望がございましたらジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
Alerts
毎月複数のアラートを送信しております。コビントンではWebinarも数多く開催しており、アラートにご登録いただくと、Webinar情報もタイムリーにお届けできます。ぜひこちらでご登録ください。
Blogs
多彩なプラクティスグループがブログ記事を発行しております。AlertのSubscription とは別になっておりますので、こちらもぜひご登録ください。
China & APAC Food, Drug, Device, and Cosmetics
Global Policy Watch
Inside Class Actions
Inside Energy & Environment
Inside Global Tech
Inside Government Contracts
Inside Jobs
Inside Privacy
Tax Withholding & Reporting
IRS Notices Provides Relief from Qualified Tips and Qualified Overtime Reporting Requirements and Guidance for Employees and Payees
ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、担当イノウエまでご連絡ください。配信停止をご希望の方はこちらから。