コビントン・バーリング法律事務所より、9月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
- CFIUSの最新動向と2025年CFIUS年次報告書・国家安全保障科学技術戦略の要点
- トランプ大統領、ロシア関連の追加関税および追加制裁を定める法案に署名
- 対カナダ338条関税が発効、カナダも報復措置を発表
- 外国製電力設備を対象とする新たな大統領令への署名および国家非常事態宣言
- CCPAに基づくサイバーセキュリティ監査義務が2027年から開始、企業に早期対応を推奨
- SECがデジタル資産の資金調達および証券規制上の取扱いに関する規則案を公表
Pick Up
[米国/CFIUS・外国投資規制]
CFIUSの最新動向と2025年CFIUS年次報告書・国家安全保障科学技術戦略の要点
Update on Current CFIUS Operations and Key Takeaways from 2025 Annual Report and the National Security Science & Technology Strategy
本稿では、対米外国投資委員会(CFIUS)の最近の運用・政策動向について、2025年年次報告書および国家安全保障科学技術戦略を踏まえて解説しています。CFIUSの最新動向としては、連邦政府機関閉鎖が生じた場合の案件滞留リスクや、連邦政府職員減少に伴う審査期間の予測可能性の低下、米軍施設周辺の不動産取引に対する審査の強化、および未届取引に対する積極的な照会等が挙げられます。特に未届取引に対する照会は中国その他懸念国に限らず、同盟国からの投資・買収についても多数の照会事例が確認されました。さらに、戦争省(Department of War)にとって重要な品目の単独供給元または唯一の認定供給元となっている米国サプライヤーの買収案件は、投資家の国籍を問わず審査が一層厳格化する可能性があります。
2025年報告書によると、CFIUSは簡易的なDeclarationを140件受理し(2024年は116件)、そのうち92件につき取引を許可しました。Declarationのクリアランス率は66%と前年の78%から低下し、同盟国・友好国からの投資であっても安全保障上の懸念を引き起こすリスクがある案件は正式届出(Notice)の提出が求められています。加えて、国家安全保障科学技術戦略は、米国の技術的優位性の確保を国家安全保障上の重点事項と位置付けており、重要技術、重要インフラ、機微な個人データ、防衛産業基盤等に関係する取引への監視は今後も強まると考えられます。日本企業は、案件の初期段階からCFIUS対応の必要性を精査し、届出方法の選択および審査の長期化やリスク軽減措置(mitigation)を見込んだ契約・スケジュールの設計を検討することが求められます。
[米国/通商・関税・制裁]
トランプ大統領、ロシア関連の追加関税および追加制裁を定める法案に署名
President Trump Signs Legislation Authorizing Russia Related Tariffs and Additional Sanctions
本稿では、トランプ大統領が2026年9月18日に署名した、ロシア関連の追加関税および追加制裁措置を定める新たな法律(Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026。Graham Act)の概要について解説しています。
同法は、(1)ロシアから米国への輸入品に最大500%の追加関税を課す権限、および(2)ロシア産原油・天然ガスの主要輸入国や、ロシア産石油に関する制裁の回避を支援する国から米国に輸入される製品についても、一定の例外・条件の下で最大100%の追加関税を課す権限を大統領に付与しています。日本はロシア産天然ガスの輸入量上位5か国の候補として挙げられているものの、中国を除く当該上位国については、輸入量や輸入削減に向けた取組みに関する一定の要件を満たし、追加関税の対象から除外される見込みとされています。また、同法は、既存の対ロシア制裁を法律上明文化するとともに、ロシア政府高官、ロシアの軍需産業やエネルギー分野等を支援する一定の外国人や外国企業、制裁回避に利用される船舶やその関係者、一定のロシア金融機関等に対する制裁を拡充しています。さらに、一定のロシア金融機関と重大な取引を行う外国金融機関も制裁対象となり得るとされています。一方で、大統領には広範な適用免除(waiver)の権限が認められています。加えて、同法は、対イラン二次制裁の重要な法的根拠であるIran Sanctions Act of 1996の有効期限を2031年12月31日まで延長しています。
[米国/通商・関税・サプライチェーン]
対カナダ338条関税が発効、カナダも報復措置を発表
Section 338 Tariffs on Canada Take Effect as Canada Announces Retaliatory Response
本稿では、2026年8月22日に米国が1930年関税法338条に基づき発動した対カナダ追加関税およびこれに対するカナダの報復措置の概要を解説しています。追加関税回避に向けた米加間の交渉が決裂した結果、米国は、化学品、加工食品・飲料、電子機器等を含むカナダからの幅広い輸入品に対して50%の追加関税を発動しました。338条は、外国が米国の通商を差別していると大統領が認めた場合に、当該国からの輸入品に最大50%の追加関税およびその他の措置を課す権限を大統領に認める規定です。他の通商法上の措置と異なり、発動に先立つ正式な調査または行政手続は必須とされておらず、トランプ大統領が同条に基づいて追加関税を課した初の大統領となりました。338条は75年以上実質的に使用されておらず、裁判所による適法性の判断も示されていないため、今後その法的根拠が争われる可能性があります。
一方で、カナダは2026年9月8日に一部の米国製品に対し、15%、25%、50%の報復関税を課しました。対象品目は鉄鋼、アルミニウム製品、乳製品等、米国が338条に基づきカナダ産品に課している関税の対象品目から選定されています。両国間の貿易対立が激化する中、各企業は今後の追加措置の可能性に注視するとともに、サプライチェーン全体への影響の評価、および追加関税措置に伴うコスト増・通関遅延・輸入制限等への対応策を検討する必要があります。
[米国/エネルギー・重要インフラ/経済安全保障]
外国製電力設備を対象とする新たな大統領令への署名および国家非常事態宣言
The Electric Grid’s ICTS Moment? New National Security Executive Order Targets Foreign-Sourced Energy Equipment
本稿では、2026年8月26日に発令された大統領令14421号「米国基幹電力系統設備の安全確保に関する国家非常事態宣言」の概要と、電力・エネルギー分野の取引に及ぼす影響を解説しています。同大統領令は、中国やロシアの企業等の“Covered Foreign Entity”と関連のある外国製の基幹電力系統設備につき、国家安全保障の脅威となると米エネルギー省が判断した場合、当該外国製設備の取得、輸入、移転もしくは設置等の取引を禁止または条件付きで承認する新たな枠組みを設けるものです。対象は変圧器、発電機、インバーター、蓄電池システムやタービン等の物理的な設備に限られず、これらに関連するソフトウェア、ファームウェア、遠隔アクセス機能、保守サービス等にも及びます。本大統領令は基本的な枠組みを設けるものであり、2026年12月下旬までにエネルギー省が具体的な施行規則を策定する予定ですが、大統領令自体は発令と同時に効力を生じており、施行規則制定前であってもエネルギー省は個別案件ごとに規制対象への該当を判断することが可能です。米国において基幹電力インフラの購入、開発、融資、投資、輸入、建設または供給に関与する企業は、今後米エネルギー省が公表する実施規則を注視しつつ、本大統領令の対象となり得る取引の特定、サプライチェーン・マッピングの見直し、およびEPC契約や機器供給契約の見直し(エネルギー省の措置により適用され得る法令変更条項、不可抗力条項、解除条項等の確認)を行うことが推奨されます。
[米国/プライバシー・サイバーセキュリティ]
CCPAに基づくサイバーセキュリティ監査義務が2027年から開始、企業に早期対応を推奨
CCPA Cyber Audits: Why Companies Should Prepare Now
本稿では、カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:CCPA)に基づき新たに導入された年次サイバーセキュリティ監査制度と、対象企業が早期に講じるべき対応について解説しています。CCPAに基づく新たな監査制度は、一定の企業に対して、毎年サイバーセキュリティ監査を実施することを義務付けています。その上で、対象企業は、自社のサイバーセキュリティ・プログラムや各種管理措置の有効性を評価し、その結果を書面による監査報告書として記録することなどが求められます。
この新たな監査制度に基づく最初の監査対象期間は2027年1月1日に開始するため、対象企業は、実質的には2026年中に監査を受けられる状態を整えておく必要があります。十分な準備がないまま監査に入ると、自社のサイバーセキュリティ上の問題や不備が詳細に報告書へ記録され、将来の訴訟等で証拠開示(ディスカバリー)の対象となるリスクも生じます。したがって、対象企業は、2026年中に監査範囲・方法の確認や監査体制の整備を行うほか、弁護士の関与の下で事前の準備状況評価(privileged readiness assessment)を行い、問題点を事前に把握・改善しておくことが推奨されます。
[米国/暗号資産/証券規制]
SECがデジタル資産の資金調達および証券規制上の取扱いに関する規則案を公表
Regulation Crypto Assets: SEC Proposes Capital Raising Onramp and Regulatory Offramp for Digital Assets
本稿では、米国証券取引委員会(SEC)が2026年8月18日に公表した、暗号資産をめぐる「投資契約」に特化した新たな規制の枠組みである「Regulation Crypto Assets(暗号資産規則案)」について解説しています。本規則案は、暗号資産プロジェクトがトークンを発行して適法に資金を調達するための手段と、将来的に暗号資産が証券規制上の「投資契約(証券)」の対象ではなくなるための仕組みを整備するものです。なお、本規則案では、証券であるデジタル資産の取引所での売買やカストディ(保管管理)、金融仲介業者の位置付けといった重要論点には触れられていません。
まず、本規則案は、「スタートアップ免除」および「資金調達免除」という2種類の登録免除制度を整備しています。「スタートアップ免除」は、初期段階のプロジェクトを支援するための制度であり、4年間で累計最大500万ドルまで資金調達を認めています。一方、「資金調達免除」は、現行のRegulation Aをモデルとしたより本格的な制度であり、一定の米国要件を満たす法人等に対象を限定しつつ、12か月間で最大2,000万ドル(Tier 1)または最大7,500万ドル(Tier 2)の資金調達を認めています。また、本規則案は、長年不透明であった「暗号資産がどのような条件を満たせば証券規制上の『投資契約(証券)』の対象から外れるかという基準」を明確にするため、「投資契約セーフハーバー」を提案しています。発行体が公約していた開発や運営といった本質的な管理的努力(essential managerial efforts)を完了、あるいは恒久的に終了したと認められる場合には、当該暗号資産は証券法および証券取引所法上の「投資契約(証券)」の対象ではないものとして扱われることになります。また、これらの免除規定に基づく募集や一定の流通市場取引については、連邦法によって各州法上の証券登録・適格要件が排除されることを提案しています。
News
[元ホワイトハウス高官がPublic Policy Practice共同代表として 入所しました] トランプ政権第1期において大統領補佐官兼ホワイトハウス国内政策会議(Domestic Policy Council)ディレクターを務めた Joseph Grogan が、Public Policy Practiceの共同代表として入所しました。同氏は、行政管理予算局(OMB)でも要職を歴任し、Associate Director for Health Programs を務めるなど、ヘルスケアおよびライフサイエンス分野に関する深い知見を有しています。コビントンは、同氏の豊富な政策立案経験を活かし、クライアントに対する政策・政府対応支援を一層強化していきます。
[ForbesのAmerica’s Top Lawyersにコビントンのパートナー9名が選出されました] これは、M&A、訴訟、国家安全保障、ホワイトカラー、環境・エネルギーなど幅広い分野で卓越した実績を有する弁護士を選出するもので、コビントンからは下記9名のパートナーが選出されました。
Catherine Dargan M&Aプラクティス共同代表
David Fagan 国家安全保障プラクティス及びCFIUSプラクティス共同代表
Douglas Gibson コビントン会長
Stacey Grigsby 政府訴訟プラクティス共同代表
Phyllis Jones 製造物責任訴訟・大規模不法行為訴訟プラクティス共同代表
Nancy Kestenbaum ホワイトカラープラクティス共同代表
Aaron Lewis ホワイトカラープラクティス共同代表
Kevin Poloncarz 環境プラクティス及びエネルギープラクティス共同代表
Neema Sahni 商事訴訟プラクティス及びエンターテイメント・メディアプラクティス共同代表
[ワシントンDCでホワイトカラークライムワークショップが開催されます] コビントンのAnti-Corruption プラクティス共同代表の Jennifer SapersteinがWhite Collar Enforcement Trends、クロスボーダー案件に豊富な経験を有するNoam KutlerがTrade Compliance and Export Controlの各セッションに登壇致します。10月16日9時30分から。オンライン配信も予定されておりますので、こちらからお申込下さい。
[Infra Global MENA Awards 2025で6冠を達成] 中東・北アフリカ(MENA)地域のインフラ・エネルギー分野を対象とするInfra Global Awards MENA 2025において、Market Impact Award、Renewables Deal of the Year、Social Infrastructure Deal of the Year、Solar Deal of the Year、Wind Deal of the Year及びRising Star of the Yearの、合計6つの賞を獲得しました。
コビントンのProject Development & Financeプラクティスは、エネルギー、インフラ、資源開発分野を中心に、プロジェクトの開発、買収、資金調達、運営、売却に至るライフサイクル全般をサポートしています。石油・ガス、発電(再生可能エネルギー・蓄電池を含む)、送配電、交通・物流インフラなど幅広い分野を取り扱い、エネルギー企業、デベロッパー、政府機関、金融機関、投資家に対してグローバルに助言を提供しています。
また、プロジェクトファイナンスや複雑な契約交渉に加え、各国の規制・政策動向を踏まえた戦略的アドバイスを提供できる点もコビントンの大きな強みです。
近年は中東を中心とする大規模再生可能エネルギー案件で数多くの実績を重ねており、Infra Global AwardsやPFI Awardsで複数の「Deal of the Year」を受賞するなど、世界的に高い評価を受けています。
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