コビントン・バーリング法律事務所より、4月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) 第二次トランプ政権における近時の大統領令及び執行動向(4月版)
2)「違法な差別の撤廃と能力主義の回復」に関する大統領令/米国政府の反DEI政策の欧州企業への影響
3) 英国がロシアに対する追加制裁を実施
4) EUのAI公共調達に係る実務者グループがAIモデル契約条項の最新版を公表
5) デジタル公正法についての解説(連載):第1回インフルエンサーマーケティング
6)トランプ政権による商船建造能力向上と国内海事産業再建に向けた取り組み
7) SEC、特定のステーブルコインは証券に該当しないと表明
8) DOJ、デジタル資産の取締り優先度引き下げへ
9) 英国で新たな外国影響登録制度が7月1日から施行
Pick Up
[米国/トランプ政権]
第二次トランプ政権における近時の大統領令及び執行動向(4月版)
Timeline of Key Developments Related to Recent Executive Actions: April Edition
本記事では、2025年4月時点における第二次トランプ政権による主要な大統領令および執行措置の動向を取りまとめています。とりわけ、政府調達に関わる企業や、米国政府から補助金を受給している企業に影響を及ぼし得る動向について、(1) 連邦政府による資金提供、(2) DEIおよびジェンダー、(3) エネルギー・環境、(4) 通商・対外援助、(5) 政府効率化省(DOGE)の5つの分野に分けて整理しています。いわゆる「トランプ関税」に関する動向については、「4. 通商・対外援助(Trade and Foreign Aid)」の項で言及されています。
[米国/DEI/コーポレートガバナンス/政府契約/欧州/雇用]
「違法な差別の撤廃と能力主義の回復」に関する大統領令/米国政府の反DEI政策の欧州企業への影響
President Trump’s “Ending Illegal Discrimination and Restoring Merit-Based Opportunity” Executive Order Targets Federal Contractors and the Private Sector
European Companies Wrestle with U.S. Government’s Anti-DEI Push
2025年1月21日、トランプ大統領は「違法な差別の撤廃と能力主義の回復」に関する大統領令を公布し、連邦政府請負業者等に対して雇用に際し積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)を求めてきた大統領令を撤廃しました。本大統領令により、連邦政府請負業者等は2025年4月21日までに積極的差別是正措置を廃止する必要があり、今後の契約では新たな公民権法遵守条項が義務付けられることになります。
また、2025年3月29日、欧州各地の米国大使館は、ベルギー、フランス、イタリア等の企業に対して、連邦差別禁止法の遵守に係る証明書(Certification regarding compliance with applicable federal anti-discrimination law)を添付したレターの送付を開始しました。これは、反DEIを目的とした上記大統領令を、欧州に拠点を置く米国政府のサプライヤーに適用することを意図したものです。同レターは、企業に対して、適用されるすべての連邦差別禁止法を遵守していること、連邦差別禁止法に違反するDEI推進プログラムを取っていないことの証明を求めています。本稿においては、そもそも連邦差別禁止法が米国以外を拠点とする企業に適用されるか、同レターが米国政府との取引に与える影響等について解説しています。
[英国/ロシア/経済制裁]
英国がロシアに対する追加制裁を実施
New UK Sanctions Targeting Russia
2025年4月24日、英国はロシアに対する追加制裁を実施しました。今回の制裁では、業務用ソフトウェア、工業設計用ソフトウェア、石油・ガス関連ソフトウェアを含む「特定分野のソフトウェア・技術(sectoral software and technology)」のロシア関連者への供給が禁止されるとともに、関連する技術の提供・技術支援、金融サービスおよび仲介サービスも規制対象となりました。さらに、輸出入が規制される品目や技術の対象範囲も拡大されています。これにより、英国によるロシア制裁の対象範囲は、EUおよび米国による制裁措置に一層近づきました。
[欧州/AI/テクノロジー]
EUのAI公共調達に係る実務者グループがAIモデル契約条項の最新版を公表
EU’s Community of Practice Publishes Updated AI Model Contractual Clauses
2025年3月5日、欧州委員会のAI公共調達に係る実務者グループは、EU AIモデル契約条項(MCC-AI)を公開しました。これは、公的機関が外部サプライヤーからAIシステムを調達するにあたって利用できる契約条項の雛形を示したものです。具体的には、契約当事者がEUのAI法を遵守できるようにすることを目的としたもので、その対象となるAIシステムに応じて、2種類の契約雛形(AI法の下で「高リスク」に分類されるAIシステム調達時の契約雛形、それ以外のAIシステム調達時の契約雛形)を提示しています。公的機関による利用を想定して作成された雛形ではありますが、実務者グループは、民間企業がAI法を遵守したAIシステム開発契約を締結するにあたっても参照可能なものであるとしています。
[欧州/消費者保護/テクノロジー]
デジタル公正法についての解説(連載):第1回インフルエンサーマーケティング
Digital Fairness Act Series – Topic 1: Influencer Marketing
現在、欧州委員会は、デジタル空間における消費者保護の強化に向けて、デジタル公正法(Digital Fairness Act:DFA)の立案に向けた検討を進めています。欧州委員会は、2024年10月3日、DFAの検討のための資料として、EU消費者法のデジタル公正性に関する適合性評価(FITNESS CHECK of EU consumer law on digital fairness)を公表しており、同資料から、欧州委員会が特に関心を寄せている事項を確認することができます。本連載では、同資料をもとに、数回にわたって、欧州委員会がDFAで新たに規制することを意図している事項について解説をする予定です。本稿(第1回)では、インフルエンサーマーケティングについて取り上げています。具体的には、欧州委員会は、DFAのようなEUレベルの包括規制の立案にあたって、EU加盟国の既存の国内法を参考とする可能性が相応にあるところ、本稿では、フランスにおけるインフルエンサーマーケティングの規制法を紹介し、DFAがインフルエンサーマーケティングに対してどのような規制を及ぼすことが予想されるかについて解説しています。
[米国/海事(海運)/トランプ政権/大統領令]
トランプ政権による商船建造能力向上と国内海事産業再建に向けた取り組み
Renewed Effort to Support Commercial Shipbuilding Capacity and the Domestic Maritime Industry
4月9日、トランプ大統領は、「アメリカの海事優位性に関する大統領令」を発令し、国内海事産業とその労働力を強化・再建し、国家安全保障と経済的繁栄を促進することを発表しました。この大統領令の大きな目的は、国内の商船建造能力の向上と海事労働力の強化とされています。具体的には、海事行動計画(Maritime Action Plan:MAP)の策定、国内海事産業強化のための貿易関連措置などが行われるとされています。本稿では、この大統領令の詳細、企業に与える影響等について解説しております。
[米国/証券取引委員会(SEC)/証券法/ステーブルコイン]
SEC、特定のステーブルコインは証券に該当しないと表明
SEC Staff Says Certain Stablecoins Are Not Securities
4月4日、証券取引委員会(Securities and Exchange Commission:SEC)は、特定のステーブルコインは連邦証券法上の証券に該当せず、したがって連邦証券法の適用対象外であるとの声明を発表しました。ステーブルコインとは、米ドル、金などを参照資産とし、安定した価値を維持するよう設計されたデジタル資産の一種です。本稿ではSECの声明が証券に該当しないとしたステーブルコインの範囲、SECによる法的分析、ステーブルコイン規制の見通しなどについて解説しております。
[米国/デジタル資産/暗号資産/司法省(DOJ)/トランプ政権]
DOJ、デジタル資産の取締り優先度引き下げへ
DOJ Memo Significantly Narrows Digital Asset Prosecution Priorities
2025年4月7日、トッド・ブランシェ司法副長官はメモランダムを発表し、司法省(Department of Justice:DOJ)によるデジタル資産への取締優先度を大幅に引き下げることを発表しました。今後、司法省はデジタル資産プラットフォーム自体の規制ではなく、そのユーザーによる犯罪の取り締まりに焦点を当てる方針です。具体的には、デジタル資産投資家を被害者とする犯罪や、カルテル・国際犯罪組織・テロ組織による犯罪等の起訴に優先的に取り組むとされています。本稿では、上記メモで表明されたトランプ政権によるデジタル資産への規制方針について、詳細に解説しております。
[英国/安全保障/外国影響登録制度(FIRS)]
英国で新たな外国影響登録制度が7月1日から施行
UK Foreign Influence Registration Scheme Launches on 1 July 2025
2025年4月1日、英国政府は、新たな外国影響登録制度(Foreign Influence Registration Scheme:FIRS)を2025年7月1日より施行すると発表しました。あわせて、同制度の運用に関する実務ガイダンスも公表されました。FIRSでは、英国における政治的影響活動(選挙、政府の意思決定、政党活動、議会での行動等に影響を与えることを目的とする一定の行為)に関し、外国勢力(外国政府や与党など)の指示を受けて契約を締結した者は、その契約締結日から28日以内に登録を行う必要があります。また、「特定者(specified persons)」(現時点では、イランやロシアの政府機関等が想定されています)については、さらに厳格な規制が設けられており、当該特定者による英国における一切の活動(政治的影響と無関係な行為を含む)についても、登録義務が課される可能性があります。
ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
News
[Navigating AI Regulation ビデオシリーズを公開しています] DeepSeekへの米国の反応からバイデンおよびトランプ政権間の政策の変化に至るまで、米国のAI規制に関するガイダンスをビデオシリーズで提供しています。
[Oxford Space Initiative とパロアルトでイベントを共催します] 5月15日に弊所パロアルトオフィスにてSmart Space DeepTech Lift Offと題するイベントをOxford Space Initiativeと共催します。下記トピックをはじめとする宇宙関連業界に関する最新情報を入手するまたとない機会ですので、パロアルト近郊の皆様にぜひお知らせください。
- How do advancements in robotics, biotech, and automation take the space and terrestrial sector to new frontiers in manufacturing, testing, and exploration?
- What are the big opportunities and gaps in public-private space partnerships?
- What are the key shared challenges for on- and off-world technologies?
- What are the core legal and policy issues concerning risk, commercialization, export controls, and national security?
[PFAS最新動向と賠償責任保険請求に関するアラートと記事が公開されました] PFASへの注目は年々大きなものとなっており、日本企業においても避けては通れない課題となっています。法的課題及び地域を横断して組成された弊所PFASチームによる、英国、欧州、米国におけるPFAS規制状況と訴訟の動向及び賠償責任保険請求にかかるトピックをまとめたアラートが公開されています。また、米国におけるPFAS関連賠償責任保険請求において取りうる手段とその是非について弊所弁護士が論じた記事がBusiness Insurance April/May 2025に掲載されましたのでこちらもぜひご覧ください。弊事務所は保険金請求分野では全米屈指のグループを擁しており、被保険者企業の代理人としてPFAS関連の賠償責任に伴う保険金回収に豊富な経験がございます。PFAS関連の訴訟が貴社に対して提起されている場合はもちろん、そうでなくても今後そのような可能性に備えて、一度現状貴社が加入されている保険の内容についてPFAS関連の賠償責任に対する補償という観点からレビューをされることをお勧めします。
Webinars
弊所主催のWebinarは、参加のご登録をいただくと後日録画をご視聴いただけます(オフレコのWebinarを除く)。開催済のウェビナーも録画視聴のご登録をいただける場合がありますのでご確認ください。録画その他のご要望がございましたらジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
Navigating the Tariffs and Trade Landscape: Considerations for the Life Sciences Industry May 6, 2025 1:00 PM - 2:00 PM EDT 登壇者の一人であるShara Aranoffは米国国際貿易委員会(ITC)委員長を務めた経験を有する関税政策の専門家であり、Alex Chinoy、Jay Smithら専門家と共に、混乱を極める関税政策への対応につきアドバイスを提供しています。先日開催されたWebinar Navigating the New Tariff Landscape: Insights on Customs Valuation and Transfer Pricingの録画はこちらからご覧いただけます。
Insider Threat Webinar Series: 営業秘密の盗用や企業スパイ行為等の内部脅威の基礎から具体的な対応策まで4部構成で網羅します。Webinarに登壇するAshden Feinはデータ漏洩対応に最も優れた弁護士50人のリスト “Incident Response 50” に7年連続で選出されています。
2025 Covington Robotics Forum - Enhanced Autonomy: Strategies to Navigate New Regulations, Risks & Opportunities May 14, 2025 1 - 2:30 p.m. EDT
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毎月複数のアラートを送信しております。コビントンではWebinarも数多く開催しており、アラートにご登録いただくと、Webinar情報もタイムリーにお届けできます。ぜひこちらでご登録ください。
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