コビントン・バーリング法律事務所より、5月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) 第二次トランプ政権下における対米外国投資規制とCFIUSの動向(2025年6月)
2) EU・英国による対ロシア制裁の最新動向
3) EU、約950億ユーロ相当の米国輸入品に対する追加関税についてパブコメを開始
4) 関税・貿易リスクに対する保険カバレッジの検討
5) 米国司法省、DEIを対象に人権不正イニシアチブを設立
6) 米国連邦下院議会、議会調査の方針を発表
7) トランプ政権が医薬品製造に関する大統領令を発表
8) トランプ政権が処方薬価格に関する最恵国待遇に係る大統領令を発表/メディケア・メディケイド・サービスセンターがメディケア医薬品価格交渉プログラムに関する新たな指針を発表
9) 保健福祉省、規制緩和に関する情報提供要請を発表
10) カリフォルニア州のアクリルアミドに関する「プロポジション65」警告が違憲と判断される
11) 下院共和党が州のAI関連規制法の10年間の一時停止措置を提案
12) 欧州議会が対内直接投資規制改正案を可決
13) 贈収賄事件に関する英国重大不正捜査局の近時の動向
Pick Up
[第二次トランプ政権/CFIUS/外国投資規制]
第二次トランプ政権下における対米外国投資規制とCFIUSの動向(2025年6月)
Reflections on CFIUS and U.S. National Security and Foreign Investment Regulation in the First Four Months of the Trump Administration
トランプ政権は以前のクライアントアラートでもご紹介したAmerica First Investment Policy(AFIP)の下、経済安全保障と国家安全保障を同一視し、同盟国・友好国からの投資促進と中国などの懸念国への規制強化を掲げました。第二次トランプ政権では、同盟国・友好国の投資家に対して、審査迅速化などの実務上の変化が見られます。また、特に一定の過去にCFIUS審査を多く経験している投資家をCFIUSファストトラックパイロットプログラムの対象として選定し、情報収集プロセスの効率化を進めています。一方で、中国に対しては、対外投資規制、米国の機微な個人データ・政府データへのアクセス制限、中国と関連があるコネクテッドビークルなどの輸入制限などの規制を導入し、AIや量子計算といった重要分野における米国のデータ、市場、資本へのアクセスを制限しています。
[EU/英国/ロシア制裁]
EU・英国による対ロシア制裁の最新動向
Recent EU and UK Russia-Related Sanctions Developments
2025年5月20日、EUは第17弾となる対ロシア制裁パッケージを採択し、新たな資産凍結指定および貿易規制を導入しました。今回の制裁は、複数のロシア大手企業の新規資産凍結指定、ロシアの「影の艦隊」に関与する船舶189隻の港湾利用禁止、輸出管理品目の追加、さらに第三国(トルコ、UAE等)の企業を含む31社の新規輸出規制対象指定が含まれます。
同日、英国も100件の新たな資産凍結指定を公表しました。主に制裁回避を支援したとされるロシアの金融機関や、「影の艦隊」に関与する船舶・個人などが対象とされています。加えて、英国政府は制裁違反に関する内部通報者保護制度を6月26日から拡大予定です。
EUは、ロシアとの停戦交渉が具体的な進展をもたらさなかった場合、更なる制限措置を採る用意があることを強調しているため、引き続き注視が必要です。
[EU/関税/第二次トランプ政権]
EU、約950億ユーロ相当の米国輸入品に対する追加関税についてパブコメを開始
EU Consults on New Tariffs on €95 Billion of U.S. Imports
2025年5月8日、欧州委員会は米国による自動車関税及びEUに対する相互関税への対抗措置として、約950億ユーロ相当の米国からの輸入品に追加関税を課す案についてパブリックコメントを開始しました。また、同時に鉄スクラップ及び特定の化学製品の輸出規制(約44億ユーロ分)も検討されています。
同措置は米国・EU間交渉が不調に終わり、7月9日に米国の相互関税(20%)が実施される場合に発動される可能性があります。
[関税/保険]
関税・貿易リスクに対する保険カバレッジの検討
Possible Insurance Coverage Options for Tariff and Trade Risks
本稿では、貿易の混乱や関税の導入による損失に対し、保険による補償の可能性を検討しています。特に、貿易障害保険(Trade Disruption Insurance)、貿易信用・政治リスク保険(Trade Credit and Political Risk Insurance)、売掛債権保険(Accounts Receivable (A/R) Insurance)などは、関税の直接的影響ではなく、供給網の混乱や取引先の債務不履行、規制変更といった副次的影響による損失を補償対象とする場合があります。関税や貿易規制による損失は、休業損失保険、貨物・倉庫保険、D&O保険、表明保証保険などの一般的な保険でも補償対象となる場合があります。条項や特約によって補償範囲が異なるため、各保険契約の補償範囲を精査し、必要に応じて専門家の助言を得る必要があります。
[米国/DEI/不正請求防止法(FCA)/司法省(DOJ)/トランプ政権]
米国司法省、DEIを対象に人権不正イニシアチブを設立
Justice Department Establishes Civil Rights Fraud Initiative, Using False Claims Act to Target DEI
2025年5月19日、司法省(Department of Justice:DOJ)人権不正イニシアチブを設立することが発表されました。連邦政府の資金を受領したり、連邦政府と契約したり、あるいは連邦政府の補助金を受領する者が、公民権法に違反したり、人種差別的な措置を行った場合、今後はイニシアチブが不正請求防止法(False Claims Act:FCA)を活用して調査や責任追及を行うとされています。トランプ政権下において、DOJはFCAを幅広い執行ツールとして積極的に活用する動きを見せており、今回のイニシアチブ設立もその一環といえます。本稿では、イニシアチブ設立の詳細、FCAリスク軽減のため企業がとるべき方策等を解説しています。
[米国/米国下院監視・政府改革委員会/議会調査]
米国連邦下院議会、議会調査の方針を発表
House Releases Sweeping Oversight Agenda for 119th Congress: Major Focus Areas for Private Sector Entities
米国連邦下院議会監視・政府改革委員会は、今後2年間にわたる議会調査の方針を発表しました。同方針は、コーポレートガバナンス改革、サイバーセキュリティ、金融サービス、テクノロジー、インフラ投資、選挙の公正性、中国の米国市場における役割、バイデン政権時代の支出などを重点分野とし、監視対象として、民間企業のプラクティス、政府契約や規制遵守に焦点を当てていることが読み取れ、企業側は議会調査の可能性に備える必要があります。本稿では、同方針の詳細な内容、企業側が備えるべきリスクについて解説しています。
[米国/ライフサイエンス/製薬・バイオテック]
トランプ政権が医薬品製造に関する大統領令を発表
Trump Administration Issues Executive Order on Pharmaceutical Manufacturing
2025年5月5日、トランプ大統領は「重要医薬品の国内生産促進のための規制緩和」(Regulatory Relief to Promote Domestic Production of Critical Medicines)と題する大統領令に署名しました。この大統領令は、米国内の医薬品製造に対する規制上の障壁を取り除き、米国内で必要な医薬品の製造能力を回復させることを目的とするものです。医薬品およびその原材料の製造に関する規制は、強固な国内製薬基盤の回復を促進するよう合理化されるべきであるとした上で、関係機関に対して必要な措置を取ることを求めています。例えば、食品医薬品局(Food & Drug Administration:FDA)長官に対しては、2025年11月1日までに、国内の製薬製造に関連する既存の規制およびガイダンスを見直すこと、FDAによる審査の迅速性および予見可能性を最大化すること、国内製薬製造の開発を合理化・加速することを命じています。
[米国/ヘルスケア/医薬品価格]
トランプ政権が処方薬価格に関する最恵国待遇に係る大統領令を発表/メディケア・メディケイド・サービスセンターがメディケア医薬品価格交渉プログラムに関する新たな指針を発表
Trump Administration Issues Executive Order on “Most-Favored-Nation” Prescription Drug Pricing /CMS Issues New Guidance for the IRA Medicare Drug Price “Negotiation” Program: Next Cycle of “Negotiations,” Expansion to Part B, and Renegotiation
2025年5月12日、トランプ政権は、「米国患者への最恵国待遇の処方薬価格の提供」(Delivering Most-Favored-Nation Prescription Drug Pricing to American Patients)と題する大統領令を発表しました。今後、保険福祉省(Department of Health and Human Services)長官は、メディケア・メディケイド・サービスセンター(Centers for Medicare & Medicaid Services)長官等と調整の上、医薬品製造業者に対して、米国における最恵国待遇価格(most-favored-nation pricing)の目標を通知することになります。また、大統領令は、医薬品製造業者が最恵国待遇価格の設定に向けての「著しい進展」を示さない場合、関係機関において、競争制限的行為に対する執行措置等の検討を行うことを求めています。さらに、同日、メディケア・メディケイド・サービスセンターは、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act)の下での、メディケア医薬品価格交渉プログラムに関する新たなガイドライン案を公表しました。これは、最大公正価格(maximum fair prices)の再交渉制度の導入等を提案するものであり、ガイドライン案に対しては、2025年7月14日までにコメントを提出することができます。
[米国/保健福祉省(HHS)/情報提供要請(RFI)/トランプ政権]
保健福祉省、規制緩和に関する情報提供要請を発表
HHS Publishes A Request for Information From The Public On Deregulation
2025年5月14日、米国保健福祉省(Health and Human Services:HHS)は、「規制確保とイノベーション促進によるアメリカの再健康化」に関する情報提供要請(Request for Information:RFI)を発表しました。このRFIは、トランプ政権下での既存の規制緩和措置を基盤に、不要な規制、過度に負担の大きい規制、時代遅れの規制を是正することを目標とし、規制緩和を通じてコスト削減、効率向上、イノベーション促進を図るための意見を募集するものです。本稿では、RFIのより詳細な内容、その背景などについて解説しています。
[米国/食品/ライフサイエンス/違憲判断]
カリフォルニア州のアクリルアミドに関する「プロポジション65」警告が違憲と判断される
California’s Prop. 65 Warnings for Dietary Acrylamide Deemed Unconstitutional
2025年5月2日、カリフォルニア州東部地区連邦地方裁判所は、アクリルアミドへの食事による暴露について「プロポジション65」の警告表示を義務付けるカリフォルニア州の規制について、恒久的な差止命令を出し、これを違憲と判断しました。アメリカ合衆国憲法修正第1条(言論の自由)の下、政府による商業的言論の強制は、「事実であり論争性のない情報」に限って許容されると解釈されています。裁判所は、アクリルアミドの食事由来リスクについては科学的合意が存在しないとして、アクリルアミドン関する警告表示は、論争的であって完全に事実に基づくものとはいえないと判断し、憲法修正第1条に違反すると結論付けました。
[米国/AI]
下院共和党が州のAI関連規制法の10年間の一時停止措置を提案
House Republicans Push for 10-Year Moratorium on State AI Laws
2025年5月14日、下院共和党は、AIを規制する州の法律・規制の施行を禁止する10年間の一時停止措置(10-year moratorium)を委員会で可決しました。これは、州に対して、実質的にAIの活用を推進する目的と効果を有するもの等を除き、AIモデル、AIシステム、自動化された意思決定システムを規制する法律又は規制を施行することを禁止するものです。これは、各州のパッチワーク的なAI規制法が、イノベーション、国家安全保障、AI分野の競争力に悪影響を与えるとの懸念を受けて提案されたものといえます。ただし、この一時停止措置を含む法案が、下院・上院本会議を通過するかは不透明で、今後の動向に注視する必要があります。
[EU/FDI/外国投資規制]
欧州議会が対内直接投資規制改正案を可決
EP Approves Draft FDI Regulation Giving Extensive Powers to EC
2025年5月8日、欧州議会は、対内直接投資の審査制度の大幅改正案(EP案)を可決し、立法手続きの次段階である欧州委員会、EU理事会、欧州議会の三者協議(トリローグ)に進みました。
本EP案は、従来加盟国が担っていた投資審査の最終判断権を一定の場合に欧州委員会に移譲する規定や、委員会が直接外国投資家や対象企業に情報請求する調査権限を新設しました。また、必要的審査対象となる事業分野を大幅に拡大し、また、一定のグリーンフィールド投資(新規事業設立)も新たに必要的審査対象としています。
[英国/重大不正捜査局(SFO)/汚職・贈収賄]
贈収賄事件に関する英国重大不正捜査局の近時の動向
How Serious Fraud Office Developments Could Impact the Corporate Enforcement Landscape
近時、英国の重大不正捜査局(Serious Fraud Office:SFO)は、国際的な汚職・贈収賄事件に関するいくつかの発表を行い、企業に対して今後の執行動向を示唆しています。具体的には、企業による自主報告・協力・起訴猶予合意に関する新ガイドライン、2件の汚職・贈収賄事件捜査の公表、年次計画の公表、内部通報奨励措置の導入促進などです。これらのSFOの一連の動向は、企業に対して明確なメッセージを発するためになされたものです。SFOは、自主報告を選択した企業に対して優遇措置を提供する一方で、自主報告を選択しなかった企業への取締・起訴強化を進めています。本稿では、新ガイドラインの背景、その内容、その他のSFOの動向について解説しています。
ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
News
[第2次トランプ政権下における追加関税措置に関する論考がNBLに掲載されました] 日本からのVisiting Lawyerとして弊所ワシントンDCオフィスで勤務中の大川信太郎弁護士による論説「第2次トランプ政権下における追加関税措置と企業の実務対応」が NBL 1291(2025.6.1)号に掲載されました。同論説では、5月22日までに公表された主な追加関税措置の概要を整理した上で、契約上の対応及びサプライチェーンの再構築並びに適用除外の活用といった日本企業が取り得る実務対応につき検討しています。また、今後の展望についても触れており、第2次トランプ政権下における関税政策への対応を迫られる企業に貴重な指針を示しています。同論考のPDFをご希望の方は、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
[米国商務省産業・安全保障担当次官を務めたAlan Estevezが入所しました] Estevezは2022年から2025年にかけて商務省産業・安全保障担当次官として半導体・AI政策をリードしたほか、米国国防総省の調達・技術・兵站担当次官補及びCFIUSにおける国防総省代表を務めた経験も有しています。同氏の加入により、全米屈指の評価を有する弊所CFIUS、貿易管理、防衛、国家安全保障分野がさらに強化されます。
[Business Insurance Legal Team of the Yearの最終候補に選ばれました] コビントンの保険請求プラクティスは全米で最大かつ最優秀との評価を得ており、過去4年で3度最終候補に選出されています。
[元FDA Associate Chief Counselが入所しました] Anna SimsはFDA 主任法律顧問室(OCC) でHatch-Waxman チームをリードし、FDA医薬品評価研究センター(CDER) 独占権審査委員会(Exclusivity Board)対応に従事していた経験を活かし、ライフサイエンスクライアントが多様な課題に対応するための戦略的アドバイスを提供します。
[IJ Global Awards MENA 2024:5つの部門でDeal of the Yearを受賞しました]
- Energy Transition Deal of the Year – Solar – PIF4 Solar PV Projects, Saudi Arabia
- Power & Transmission Deal of the Year – TAIBA-1 and QASSIM-1 IPPs, Saudi Arabia
- Renewable Deal of the Year – Solar – PIF4 Solar PV Projects, Saudi Arabia
- Utilities Deal of the Year – Water Treatment – Al Haer ISTP, Saudi Arabia
- Water Deal of the Year, Desalination – Hassyan Independent Water Project, Saudi Arabia
[Kyongwha ChungがNY州法曹協会代表団の一員として大阪でセミナーをしました] Chungは国際仲裁の専門家であり、企業間紛争を回避するための契約条項等についてもアドバイスしています。
Webinars
弊所主催のWebinarは、参加のご登録をいただくと後日録画をご視聴いただけます(オフレコのWebinarを除く)。開催済のウェビナーも録画視聴のご登録をいただける場合がありますのでご確認ください。録画その他のご要望がございましたらジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
Insider Threat Webinar Series: 営業秘密の盗用や企業スパイ行為等の内部脅威の基礎から具体的な対応策まで4部構成で網羅します。Webinarに登壇するAshden Feinはデータ漏洩対応に最も優れた弁護士50人のリスト “Incident Response 50” に7年連続で選出されています。
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