July 2025 Monthly Roundup/2025年7月 米国・グローバル最新トピックのご紹介- Covington

コビントン・バーリング法律事務所より、６月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。

今月のPick Up記事は下記になります。
1) IEEPA関税を巡る近時の訴訟動向
2) 有機フッ素化合物（PFAS）責任に直面する医療機器メーカーとその保
険対応
3) 英国の新たなデータ法制－ライフサイエンス分野にとって何を意味す
るのか
4) ライフサイエンス分野における量子コンピューティングの影響
5) 2025年5月のEU消費者保護法に関するCJEU主要判決の概要
6) ワシントンとコロラド州が合併前届出を義務付ける法律を制定

Pick Up

[米国／第二次トランプ政権／関税]

IEEPA関税を巡る近時の訴訟動向

The Status of Recent Legal Challenges to the Trump IEEPA Tariffs and Implications for Importers

第二次トランプ政権による国際緊急経済権限法（IEEPA）に基づく関税措置（相互関税を含む。）に関して違憲・違法性を争う訴訟が提起され、米国国際貿易裁判所及びコロンビア特別区連邦地方裁判所で一部勝訴判断が出されています（現在控訴中）。米国国際貿易裁判所は当該関税措置の執行停止を認めましたが、現在、執行停止の効力は一時的に留保されており、控訴審で審理が続いています。また、別途、中国を対象とする少額免税制度（de minimis）の撤廃の違法性や、IEEPAに基づく関税の返還を求める集団訴訟も係属中です。今後の判決は国際緊急経済権限法（IEEPA）に基づく関税の有効性に大きな影響を及ぼす可能性があります。関係する企業は、訴訟の動向に注視し、関税の返還請求に向けた適切な準備が必要になります。

[米国／有機フッ素化合物（PFAS）／ヘルスケア／保険]

有機フッ素化合物（PFAS）責任に直面する医療機器メーカーとその保険対応

Insurance Considerations for Medical Device Companies Facing Potential PFAS Liability

近時、有機フッ素化合物（Per- and poly-fluoroalkyl substances ：PFAS）への暴露を理由とする損害賠償請求が急速な広がりを見せています。PFASは、医療機器を含む多様な製品に用いられており、カテーテル、ペースメーカー、義肢、手術用器具等に広く利用されています。しかし、近時、PFASの人体への暴露がガンやその他の疾病と関連しているとの主張がなされ、多様な訴訟が提起されています。そして、それと同時に、このような訴訟による企業の損失を補償する保険の適用関係についても問題となっています。本稿では、医療機器に用いられるPFASの役割、最新のPFAS関連訴訟の分析、ＰFSA訴訟に関する保険適用の有無などについて詳細に分析しています。

[英国／データ保護／ライフサイエンス・ヘルスケア]

英国の新たなデータ法制－ライフサイエンス分野にとって何を意味するのか

The UK’s new Data Legislation – What does it mean for the Life Science sector?

2025年6月24日、英国において、データ（利用とアクセス）法（Data （Use and Access）Act）が成立しました。データ法は、データの利活用の促進等を目的として、英国のデータ保護法（UK GDPR等）の規律を改正するものです。これによって、英国のデータ保護法は、EUのデータ保護法（GDPR）とは一部異なるアプローチを取ることになります。特にライフサイエンス分野では、科学研究目的の個人データ処理に関する規律が緩和されたことは重要だといえます。すなわち、データ法の下では、事業者は、個人データについて、仮名化等の「適切な保護措置」（appropriate safeguards）を講ずるのであれば、その取得時の利用目的から離れて、科学研究目的（商業的活動として行われる研究を含む）でこれを処理することが可能になります。本記事では、英国のデータ法の重要な改正事項について解説しています。

[ライフサイエンス／量子コンピューティング]

ライフサイエンス分野における量子コンピューティングの影響

Quantum Computing and its Impact on the Life Science Industry

量子コンピューティングは、従来のコンピュータを凌駕する計算能力を有しており、ライフサイエンス分野の企業に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、創薬、臨床開発、診断、治療、製造及びサプライチェーンの最適化、合成データ生成の分野における影響について解説しています。特にAIとの併用により、様々な分野における速度及び精度の向上に資する一方、高度な暗号解読能力により個人情報や機微な患者データに対する脅威になり得るなど法的・倫理的課題も伴うため、今後の政策・規制動向に注視が必要です。

[欧州／消費者保護]

2025年5月のEU消費者保護法に関するCJEU主要判決の概要

Overview of Key CJEU Rulings on EU Consumer Protection Law of May 2025

本記事では、EU消費者保護法に関して、欧州連合司法裁判所（the Court of Justice of the EU）が2025年5月に下した判決を紹介しています。具体的には、不公正契約条項指令（The EU Unfair Contract Terms Directive）、誤認・比較広告指令（The EU Directive on Misleading and Comparative Advertising）、電子商取引指令（The EU Directive on Electronic Commerce）に関する判決を紹介しています。EU消費者保護法については、現在、欧州委員会が、デジタル空間における消費者保護の強化を目的として、デジタル公正法（Digital Fairness Act）の制定に向けての取組を進めており、今後も注視が必要な分野だといえます（デジタル公正法を解説する連載記事（第1回、第2回、第3回）もご参照下さい）。

[米国／HSR／M&A]

ワシントン州とコロラド州が合併前届出を義務付ける法律を制定

Washington and Colorado Are the First States to Enact the Uniform Premerger Notification Act

近時、ワシントン州とコロラド州は、ハート・スコット・ロディノ法（Hart-Scott-Rodino ：HSR法）に基づく届出を提出する事業者が、一定の条件を満たす場合には、その写しを州司法長官にも提出することを義務付ける法律を制定しました。また、他の州においても、同様の法律の制定が検討されています。これには州司法長官と連邦機関間の早期の情報共有と調整を促進する狙いがありますが、他方で提出者に多くの負担を課すことになります。本稿では、今回制定された法律の内容、他の州の動向、政策上の論点などについて詳細に説明しています。

ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。

News

[日本製鉄によるUSスチール買収においてCFIUSの承認を得ました] コビントンはUSスチールを代理してこの歴史的な取引を成功裏に完了させました。Mark Plotkin, David Fagan、Jonathan Wakelyをはじめとする弊所CFIUSチームは、日本企業に対するアドバイスの経験も豊富に有しており、引き続き多くの日本企業にお役にたてるよう尽力して参ります。

[米国及び欧州のライフサイエンスチームがさらに拡充されました] 米国保険福祉省（HHS）下でメディケアとメディケイドを統括するメディケア・メディケイド・サービスセンター（CMS）において、Medicare Drug Rebate and Negotiations Group政策局副局長を務めたTJ Garriganがワシントンオフィスに、欧州医薬品庁（EMA）の訴訟部門長を務めた Spiros Drososがブリュッセルオフィスに入所しました。

[弊所ロサンゼルスオフィスの３名の弁護士がEntertainment Business Visionariesに選出されました] David Lefebvre, Robyn Polashuk, Neema Sahniの３名が、The Los Angeles Times and The Envelope magazineの選ぶEntertainment Business Visionariesリストに２年連続で選出されました。

Webinars

弊所主催のWebinarは、参加のご登録をいただくと後日録画をご視聴いただけます（オフレコのWebinarを除く）。開催済のウェビナーも録画視聴のご登録をいただける場合がありますのでご確認ください。録画その他のご要望がございましたらジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。

DOJ's New FCPA Enforcement Guidelines and What They Mean for Companies in the Middle East and Africa: 2025年6月10日、米国司法省は、トランプ大統領が2025年2月に発したFCPAの一時停止措置を終了する新たなガイドラインを発表しました。新たなガイドラインに基づく非米国企業に対する執行強化の可能性等につき議論します。 July 7, 2025 8:00 - 9:00 a.m. EDT
Key CJEU Data Privacy Judgements in 2025: 2025年上半期に欧州司法裁判所が下した主要な判決を分析し、これらの判決がEU内の企業及びGDPRの適用を受ける企業に与える影響について解説します。July 9, 2025 5:00 - 6:00 p.m. CEST