November 2023 Monthly Roundup/2023年11月 米国・グローバル最新トピックのご紹介- Covington
November 2023
コビントン・バーリング法律事務所(Covington & Burling LLP)より、10月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。Pick Up記事については日本語でコメントを付しておりますのでぜひご覧下さい。
Pick Up
今月は下記5つの記事をピックアップしております。
1) バイデン政権が人工知能の開発に関する大統領令を発令
2) 先端コンピューティング関連品及び半導体製造装置に関する輸出規制の強化
3) カリフォルニア州における気候変動に関する情報開示義務法案
4) 被買収企業不正行為の自己申告奨励制度の公表
5) イギリスによるロシア関連の法的助言禁止規制
[IT/AI開発規制/政治]
バイデン政権が人工知能の開発に関する大統領令を発令
Biden Administration Announces Artificial Intelligence Executive Order
バイデン政権は、2023年10月30日、人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」といいます。)の開発に関する大統領令(以下「本大統領令」といいます。)を発令しました。本大統領令は、AI開発の新たな安全基準の策定、個人情報保護、平等及び人権の保障、消費者(特に医療患者及び学生)の保護、労働者の雇用保障といった、多方面にわたるAI開発規制について方針を示すのみならず、AI開発における米国の国際的なリーダーシップを確立するための方策を掲げるなど、AI開発に関連する米国の包括的な政策をまとめたものといえます。例えば、本大統領令は、AI開発が国・経済の安全保障や公衆衛生に重大なリスクを生じさせる場合には、モデルトレーニングの通知及びレッドチーム演習の結果の報告を連邦政府に対して行うことを開発者に義務付けています。そのほかにも、本大統領令は、暗号化技術等の利用による個人情報保護の強化や、AI利用による差別の防止に向けたガイドラインの策定、ヘルスケア及び医薬品開発における責任あるAIの利用、教育現場におけるAI利用のサポート、労働者の採用・解雇や待遇について雇用主が順守すべき原則の策定などを掲げています。さらに、本大統領令は、AI開発において米国が国際的なリーダーシップをとるべく、AIの研究者等に対してAIのリソース、データ及び補助金の提供を行うプログラム(National AI Research Resource)を試験的に開始することや、AI開発規制の国際的なフレームワーク構築に向けた検討を行うことも明らかにしています。本大統領令に示された政策の多くは、各連邦政府関係機関により具体化されていく予定であり、今後の動向に引き続き注視が必要です。
[国際通商/輸出管理規制/米中対立]
先端コンピューティング関連品及び半導体製造装置に関する輸出規制の強化
U.S. Expands October 7, 2022 Export Controls Restrictions on Advanced Computing and Semiconductor Manufacturing Items
米国商務省産業安全保障局(U.S. Commerce Department, Bureau of Industry and Security、以下「BIS」といいます。)は、2023年10月17日、輸出管理規則(Export Administration Regulations、以下「EAR」といいます。)の改正規則を公表し(以下「本改正」といいます。)、先端コンピューティング関連品及び半導体製造装置等に対する規制を強化することを明らかにしました。本改正は同年11月17日に施行される予定です。BISは、2022年10月7日、中国によるスーパーコンピューターの開発や半導体の製造等に対抗すべくEARを改正しており(以下「2022年改正」といいます。)、本改正はそれをさらに強化するものと位置づけられます。本改正の内容は多岐にわたりますが、総じてEARの適用範囲を拡大するものであり、例えば、2022年改正で規制品目リスト(Commerce Control List)に新設されたECCN 3B090に該当する半導体製造装置等は、ECCN 3B001及び3B002に分類し直され、新たに規制対象に加えられる半導体製造装置等と併せて、国家安全保障(National Security)及び地域安定(Regional Stability)を管理理由とするより広範な規制を受け得ることとなります。また、特定のリソグラフィ装置に対しては新たに0% デミニミスルールが適用され(ただし、日本国が輸出国又は再輸出国の場合の例外規定あり。)、さらには、先端コンピューティング関連品の外国直接製品ルール(Foreign Direct Product Rule)が適用される輸出先国に中東諸国(バーレーン、エジプト、クウェート等)が追加されます。本改正も、2022年改正に引き続き、米国以外の企業による輸出が規制対象となり得ることから、日本企業の行う取引に影響を与える規制強化といえ、留意が必要です。
[カリフォルニア/開示規制/気候変動/ESG]
カリフォルニア州における気候変動に関する情報開示義務法案
Preparing for Compliance with California’s New Landmark Climate Disclosure Laws
2023年10月7日、カリフォルニア州知事Gavin Newsomは、上院法案253号(以下「SB253」といいます。)及び上院法案261 号(以下「SB261」といいます。)に署名しました。これらの法案は、今後の正式な立法手続及びカリフォルニア州大気資源委員会(California Air Resources Board、以下「CARB」といいます。)が策定する施行規則によって修正される可能性はあるものの、現状では、カリフォルニア州で事業を行う事業体に対し、気候変動に対する広範な情報開示義務を課しています。SB 253では、カリフォルニア州で事業を行う年間売上高10億ドル以上の事業体に対し、温室効果ガス排出量の年次報告を義務付けています。SB 261では、カリフォルニア州で事業を行う年間売上高5億ドル以上の事業体に対し、2年ごとの、気候関連に関連する財務リスク及びそのリスクへの対策に関する報告書の作成を義務付けています。もっとも、現状のSB 253及びSB 261は、「カリフォルニア州で事業を行う」の定義内容が不明確である点や、各法案のもとでの年間売上高が、1)総売上高ベースであるのか純売上高ベースであるのか、2)カリフォルニア州内で生じた売上高だけでなく全世界で生じた売上高を含むのか、3)当該事業体単体ベースではなく連結ベースでの売上高であるのかが不明である点等、今後策定される施行規則において明確にされるべき事項が多数あります。カリフォルニア州で事業を営む事業体は、今後の立法手続及びCARBによる施行規則の策定手続を注視しつつ、温室効果ガスプロトコルの基準やガイダンス等の理解を深める等、これらに適応するための準備を行うことが重要です。
[M&A/刑事執行政策/Safe Harbor Policy/自己申告奨励制度]
被買収企業不正行為の自己申告奨励制度の公表
DOJ Provides Further Voluntary Disclosure Incentives, This Time Linked to M&A Transactions, and Signals Other Areas of Focus
2023年10月4日、アメリカ司法省(United States Department of Justice、以下「DOJ」といいます。)は、M&Aと企業の刑事執行に関する新たな政策である「Safe Harbor Policy」を公表しました。この政策は、買収企業に対し、1)買収後6ヶ月以内に被買収企業の不正行為を自己申告し、2)DOJの調査に全面的に協力し、3)取引完了日から1年以内に当該不正行為に対する適切かつ迅速な是正措置を講じ、4)必要に応じて補償金等を支払う場合には、刑事告発を免除される機会を提供しています。この政策は、企業に対し、M&A前後におけるコンプライアンス重視を促しており、今後正式に文書化され、運用されると見込まれています。もっとも、Safe Harbor Policyが適用される「M&A」の具体的な範囲(既存株主が出資比率を高めて支配権を取得する取引が含まれるのか等)をはじめとして、本政策にはさらなる明確化を要する点もあります。今後M&Aを検討する企業は、Safe Harbor Policyに基づく自己申告実施による利益と潜在的なコストや負担等の適切な比較検討ができるよう、M&A前後のデューディリジェンス及び統合プロセスを通じて、被買収企業における過去又は継続中の不正行為を迅速に特定できるようにする必要があります。また、DOJは、今後の政策変更の予定についても言及しており、今後の政策内容及び運用にも注目が集まっています。
[ロシア/制裁措置/イギリス規制/法的助言禁止]
イギリスによるロシア関連の法的助言禁止規制
UK Sanctions: Legal Advisory Services Prohibition
イギリス政府は、2023年6月29日、イギリス国籍の弁護士及び(国籍に関係なく)イギリスに所在する事務所又は企業に勤務する弁護士が、イギリス国外の依頼者に対し、一部の例外を除き、ロシア制裁に関連する法的助言サービスの提供を禁止する新たな規制を導入しました。もっとも、当該規制は、イギリス法曹界との事前協議及び予告なく発布されたものであり、当事務所は、イギリス議会宛に、本規制による規制対象弁護士に対するコンプライアンス関連のアドバイスを提供する能力に与える潜在的な影響を懸念し本規制の撤回又は修正を要請する書簡を送付しました。これらを踏まえ、イギリス当局は、この問題を軽減するために短期的にはコンプライアンスに関連する助言等を認める一般ライセンス(以下「GL」といいます。)を発行するととし、長期的には規制のさらなる改正を検討することを約束しました。しかしながら、当該GL制度も、GLを使用する者は、GLの権限のもとで行われた行動の記録を保持し、これらの記録をイギリス政府が調査できるようにしなければならない等、弁護士業の性質(秘匿特権等)に照らし、不適切な内容となっています。当事務所は弁護士会等と協議の上、当該GL制度の修正を求めるコメントを提出し、イギリス政府も、法的特権の保護の対象となる情報は開示義務の対象とはしないとする等一定の理解を示し、規則改正の検討を約束しています。当事務所は、今後もコンプライアンス関連のアドバイスをクライアントに提供し続けることができるようにGLに登録する(かつ不必要な情報をイギリス政府に対して提供することはない)予定であり、また、政府が適切な規制を策定するよう、引き続き働きかける予定です。規制対象となる弁護士、企業及び法律事務所は、関連する法的サービスを提供し続けることができるようGLへの登録を検討することが推奨されます。
News
[メタバースに関する日本語記事が掲載されました]
Business Lawyers Onlineに弊所MetaverseグループのPhillip Hillらによる記事「メタバースをめぐる米国の動向-管轄、準拠法、著作権侵害訴訟など」が掲載されました。日本語に翻訳されており、また記事にはどなたでもアクセスいただけますので、ぜひご一読ください。
[American College Fellowに選出されました]
弊事務所パートナーPhyllis Jonesが北米最高峰の訴訟弁護士団体であるthe American College of Trial Lawyersの Fellow に選出されました。コビントンではLanny Breuer, Robert Haslam, Carolyn Kubota, John Nields, George Pappas, William Phillips及びPaul Schmidtに続く8人目となります。
[金融サービスプラクティスに新たなパートナーが加わりました]
David Bermanがロンドンオフィスに入所しました。在米の金融サービスプラクティスチームと連携し、ロンドンからEMEA全域における金融サービスプラクティスチームをリードします。
[元欧州委員会委員が入所しました]
欧州委員会において、化学、自動車、電子機器、IT インフラ、機械、医療機器、水素など多様な分野の商品やサービスに関する規則の策定に関与し、知的財産の取扱いや標準化などEUにおける産業政策を統括していたElżbieta Bieńkowskaがコビントンのグローバルパブリックポリシープラクティスチームの一員としてブリュッセルオフィスに入所しました。
[キャピタルマーケッツプラクティスに新たなパートナーが加わりました]
海外発行体のためのクロスボーダー・オファリングなどにも豊富な経験を有するMichael D. Malineがコビントンのキャピタルマーケッツプラクティスグループの一員としてNYオフィスに入所しました。
Webinars
弊所主催Webinarは、参加のご登録をいただくと後日録画をご視聴いただけます(オフレコのWebinarを除く)。参加の難しい時間帯のWebinarもぜひご検討ください。
[AI in Pharma Webinar Series]
11/6 (9 a.m. (PT)), 11/15 (11 a.m. (PT)), & 12/7 (10:30 a.m. (PT)) ヘルスケアとライフサイエンスにおけるAIの開発と導入に焦点をあてたウェビナーを3回にわたるシリーズでお届けします。
[PLI Conference | Coping with U.S. Export Controls and Sanctions 2023]
12/14 & 15 6 a.m. (PT)- 弊所パートナー Peter Flanagan がCo-Chairをつとめる米国貿易管理と経済制裁に関するPLIカンファレンスが開催されます。ディスカウントコードをご希望の方は担当イノウエまでご連絡ください。
Alerts
毎月複数のアラートを送信しております。コビントンではWebinarも数多く開催しており、アラートにご登録いただくと、Webinar情報もタイムリーにお届けできます。ぜひこちらでご登録ください。
Blogs
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