コビントン・バーリング法律事務所より、10月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
- サイバーインシデントに対する米国議会の監視・調査リスクと企業の対応上の留意点
- EU・米国における対ロシア制裁の最新動向
- 英国が対イラン制裁を大幅に拡大、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地に関する新措置も発表
- 欧州防衛分野の投資をめぐる規制の最新動向
- 米ホワイトハウス、米中貿易委員会の枠組みに基づく関税引下げ候補品目を公表
- EU・英国における自動運転車の実用化に向けた規制・責任の枠組みの整備が進展
- カリフォルニア州、AIの透明性や特定分野での利用等に関する20以上の新法を制定
- カリフォルニア州、雇用におけるAI・自動化技術の利用を規制する3つの新法を制定
[米国/サイバーセキュリティ/議会調査]
サイバーインシデントに対する米国議会の監視・調査リスクと企業の対応上の留意点
From Incident Response to Congressional Response: Preparing for Oversight Before and After a Cybersecurity Incident
本稿では、企業のサイバーセキュリティ対策に対する米国議会の関心が高まる中、サイバーインシデントが議会による監視・調査につながるリスクと企業の対応上の留意点について解説しています。特に、機微情報や重要インフラに関係する重大なインシデント、政府・重要インフラのシステムに影響を及ぼす事案、国家を背景とする攻撃者が関与する事案、大規模または機微なインシデントとして社会的な注目を集める事案等については、規制当局や法執行機関による調査に加えて、議会調査の対象となる可能性があります。また、議会の関心は実際に情報漏えいが発生した事案に限られず、企業のサイバーセキュリティやプライバシー管理上の問題にも及ぶ可能性があります。
議会調査は、規制当局による調査や民事訴訟とは異なる手続やリスクを伴い、短期間で広範な資料提出を求められるほか、当初は非公開で進められていた調査が、公開質問状の発出や調査報告書の公表、公聴会の開催等に発展する可能性があります。また、通常の民事訴訟における裁判所の監督や秘密情報を保護する手続等が一般には適用されず、弁護士・依頼者間秘匿特権等の取扱いにも特有の問題が生じる可能性があります。さらに、議会調査と規制当局・法執行機関による調査や民事訴訟が並行する場合、議会への提出資料や説明が他の手続にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、企業は、サイバーインシデント対応や危機管理計画に議会調査のリスクも組み込み、複数の調査・訴訟を想定した一体的な対応を検討することが重要とされています。
[EU・米国/対ロシア制裁]
EU・米国における対ロシア制裁の最新動向
Recent Developments in EU and U.S. Sanctions Relating to Russia
本稿では、EUによる対ロシア資産凍結措置と、米国の対ロシア制裁法(グラム法)に基づく関税・制裁の実施状況を解説しています。
EU理事会は2026年10月12日、ロシアの軍産複合体に属するとされた826法人とその幹部743人、占領下のウクライナ領で行われたロシア国家院選挙に関与した77人、さらにロシア・北朝鮮間の軍事・核協力に関連する3人・4法人を資産凍結対象に追加しました。これにより、指定対象者の資金・経済資源は凍結され、指定対象者への直接・間接の資金または経済的資源の提供が禁止されるほか、指定対象者が50%以上所有または支配する非指定企業にも同規制が及ぶ場合があります。また、EU理事会は同年9月22日、3,000を超える個人・法人を対象とする資産凍結制裁を2029年9月22日まで3年間延長する一方、ミハイル・フリードマン氏やアリシェル・ウスマノフ氏等のロシア人実業家らを制裁指定から解除しました。
米国では、トランプ大統領が10月16日、グラム法を実施する大統領令を発表し、同法115条に定める広範な免除権限を行使し、同法に基づく全ての関税・制裁・米国人向け禁止措置の適用を免除しました。ただし、従来の対ロシア制裁自体は解除されていません。さらに、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は一般許可135を発行し、米国制裁法令上禁止されている取引のうち、ロシア原産ディーゼル燃料の販売、配送、荷揚げおよび輸入等に関連する一定の取引を、2027年4月7日まで許可しました。こうしたトランプ政権による対ロシア制裁の緩和には超党派の批判が出ていますが、仮に中間選挙後に民主党が議会の一院または両院を掌握して政策見直しを図っても、大統領の拒否権を覆すには両院で3分の2以上の賛成が必要となり、実現には大幅な共和党議員の協力が不可欠となります。
[英国/対イラン制裁/輸出入管理]
英国が対イラン制裁を大幅に拡大、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地に関する新措置も発表
UK Adopts New Iran Sanctions and Announces Measures Relating to Israeli Settlements
本稿では、英国が2026年9月8日に制定し、同月29日に施行した「対イラン制裁規則」(Iran (Sanctions) (Amendment) Regulations 2026)による対イラン制裁の拡大と、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地に関する新措置を解説しています。今般改定された対イラン制裁規則の主要施策としては、エネルギー分野で使用される製品、金、貴金属やERPを含む事業用ソフトウェア等の輸出制限や、イラン原産またはイランから発送される石油、石油製品、石油化学製品および天然ガス等の輸入、購入及び第三国間での供給に関する制限が挙げられます。加えて、エネルギー分野ならびにウラン採掘、濃縮および加工に関連する活動を含む特定の分野で事業を行うイラン関係者への投資の禁止や、イラン貨物航空機の英国への着陸禁止等、海運・運輸分野における制限も導入されます。
さらに、英国政府はヨルダン川西岸のイスラエル入植地を原産地とする物品の輸入禁止および一定の種類のサービスに対する制限を含む新たな措置を発表しました。なお、これらの措置を実施するための法令は現時点ではまだ制定されておらず、今後6~9か月以内に整備される予定です。
[EU・英国/防衛分野/企業結合審査・外国投資審査・外国補助金規制]
欧州防衛分野の投資をめぐる規制の最新動向
Navigating European Regulatory Regimes for Defense Sector Investments and Deals | Covington Competition
本稿では、地政学的緊張と欧州の防衛支出拡大を背景に活発化する防衛分野の投資・M&Aについて、企業結合審査、外国投資審査及びEU外国補助金規則(FSR)の最新動向を解説しています。EU・英国の企業結合審査では、防衛即応力、イノベーションの加速及び供給の安定性向上等、企業結合によって実現する効率性を評価する傾向が強まっており、防衛分野の企業結合に対して、より柔軟な審査が行われる可能性があります。他方、外国投資審査は厳格化しており、2028年1月施行予定の改正EU外国直接投資審査規則は、全加盟国に審査制度の導入を義務付け、デュアルユース品や防衛関連の製品・技術を最低限の審査対象としています。したがって、同盟国の投資家であっても審査が長期化し、条件付き承認が増加する可能性があります。また、買収対象企業のEU域内売上高が5億ユーロ以上であり、かつ契約締結前3年間に当事者である全企業が第三国から受けた資金的貢献の合計額が5,000万ユーロを超える場合、FSR上の承認が必要となる可能性があり、FSRに基づく届出・審査は、取引日程や実行確実性に追加的なリスクをもたらします。欧州の防衛関連企業への出資、買収又は合弁を検討する日本企業は、取引の初期段階から企業結合審査、外国投資審査及びFSRの適用可能性を並行して確認し、複数当局の審査期間、情報提出、是正措置及び取引契約上の条件を一体的に検討することが求められます。
[米国/通商・関税・サプライチェーン]
米ホワイトハウス、米中貿易委員会の枠組みに基づく関税引下げ候補品目を公表
White House Announces Product Lists for Potential Tariff Cuts under U.S.-China Board of Trade Mechanism
本稿では、米中首脳会談を受けて2026年9月27日にホワイトハウスが公表した、米中貿易委員会の枠組みについて解説しています。同委員会は、米中双方がそれぞれ約300億ドル相当の「非センシティブ」輸入品を選定し、相互の関税軽減を検討する「30-for-30」枠組みを公表しました。ホワイトハウスは、対象となり得る品目として、米国が中国から輸入する中国製品リスト及び中国が米国から輸入する米国製品リストを掲載しました。さらに、今回の発表には、米中貿易委員会の今後の運営方法を定める運用手続及び付託条項も含まれています。
関税引下げの対象候補は、米国が中国から輸入する家電、玩具、季節装飾品、チャイルドシート等の消費財と、中国が米国から輸入する農産品、水産物、木材、化粧品、医療機器等です。約90%の対象品目について最恵国税率(MFN)までの引下げが見込まれる一方、現時点の品目リストは「勧告」と位置付けられており、米国では通商法301条に基づく告示・意見募集等の国内手続が必要なため、実施には数か月を要する可能性があります。関税軽減の範囲については、強制労働および過剰生産能力に関する通商法301条関税が対象となる可能性がある一方、第1次トランプ政権時の技術移転・知的財産関連の301条関税が免除されるかは不透明です。また、通商拡大法232条関税およびアンチダンピング・相殺関税(AD/CVD)は軽減対象外となる見込みです。
[EU・英国/自動運転/規制]
EU・英国における自動運転車の実用化に向けた規制・責任の枠組みの整備が進展
Overview of EU and UK Regulatory Developments relating to Autonomous Vehicles
本稿では、自動運転車(Autonomous Vehicles:AVs)の実用化・商用化が進む中、EUおよび英国における自動運転車に関する規制および責任の枠組みの最新動向について解説しています。EUでは、2026年6月に18の加盟国が自動運転車の大規模な国境横断実証に関する共同宣言に署名したほか、国連欧州経済委員会(UNECE)が完全自動運転システムに関する初の国際的な規制枠組みを採択し、欧州委員会はこれをEUのGeneral Safety Regulationに取り込む方向で準備を進めています。一方、英国でも、2026年5月に自動運転による旅客サービスの許可制度が施行されるなど、自動運転車の実用化に向けた制度の整備が進んでいます。
また、EUでは、2026年12月9日以降に市場投入または使用開始される製品に対して改正製造物責任指令(Product Liability Directive:PLD)が適用され、単独で提供されるソフトウェアや製品に組み込まれたソフトウェアについても製造物責任の対象となります。そのため、自動運転車では、車両本体だけでなく、自動運転ソフトウェアやAIを利用した運転機能等についても製造物責任を問われる可能性があります。英国でも、自動運転車の安全基準や認可制度の整備とともに、AI等の新興技術を踏まえた製造物責任制度の見直しが進められています。
[米国/カリフォルニア州/AI規制]
カリフォルニア州、AIの透明性や特定分野での利用等に関する20以上の新法を制定
California Governor Signs Over 20 AI-related Bills into Law
本稿では、2026年9月末にカリフォルニア州で制定されたAIに関する20以上の新法について解説しています。新法は、生成AIやフロンティアモデルの監督、AIの透明性、特定の業界・用途におけるAIの利用等、幅広い分野を対象としています。
具体的には、California AI Transparency Actの改正により、同法の対象となる生成AI提供者の範囲が拡大され、AI生成コンテンツに関する開示や検証ツール等の要件が変更されるほか、広告にAIで生成された合成人物(synthetic performer)を目立つ形で使用する場合の開示義務や、一定の顧客対応チャットボットについてAIであることを明示する義務等が導入されます。また、法律・医療等の分野でもAI利用に関する新たな要件が設けられ、弁護士については、生成AIに法律業務を委ねることが禁止されるとともに、その成果物の正確性を合理的に確認することなどが求められます。医療分野でも、一定の臨床機能や心理療法サービスにおいてAIを利用することを制限する規制が導入されます。
[米国/カリフォルニア州/AI・雇用規制]
カリフォルニア州、雇用におけるAI・自動化技術の利用を規制する3つの新法を制定
New California AI Employment Laws: Key Requirements for Employers
本稿では、2026年9月末にカリフォルニア州で制定された、雇用におけるAI・自動化技術の利用を規制する3つの新法について解説しています。SB 947(「No Robo Bosses Act」)は、雇用主による自動意思決定システム(Automated Decision Systems:ADS)の利用について、保護される属性に関する一定の推測や、労働者による法的権利の行使を予測して不利益な措置を講じることを禁止するほか、ADSに基づき懲戒・解雇を決定する場合には人による裏付けを求め、ADSに主として依拠して当該決定を行った場合には労働者への事後通知を義務付けています。同法は2027年7月1日に施行される予定です。
また、SB 951は、California Worker Adjustment and Retraining Act(Cal/WARN)を改正し、AIその他の自動化技術が主な要因となって大量解雇、事業所移転または事業終了を行う場合に、自動化技術による人員削減であることや対象職種、自動化される業務、使用される技術等について追加的な通知を求めています。
AB 1883は、従業員のデータ、活動、通信、バイオメトリクス、行動等を収集する職場監視ツールの利用を規制し、一定の例外を除き、従業員の感情を推測・予測することや神経データを収集することを禁止しています。SB 951およびAB 1883はいずれも2027年1月1日に施行される予定です。
[製造物責任訴訟部門で最優秀に輝きました] The National Law Journalの選ぶProduct Liability Litigation Department of the Yearは、同部門のファイナリストの中から最優秀と評価された法律事務所に授与される賞で、コビントンの製造物責任訴訟グループは今回、2度目の受賞を果たしました。同グループは、The American Lawyerからも4度にわたりProduct Liability Litigation Department of the Yearを、Law360からも2025 Product Liability Practice Group of the Yearに選出されるなど、継続して高い評価を受けています。
また、The National Law Journalより、Devin DeBackerとKayleigh Scalzoが、それぞれNational Security(国家安全保障)およびGovernment Contracts(政府契約)分野のRising Starに選出されました。
[CFIUS Team of the Yearを5年連続で受賞] コビントンは、International Financial Law Review (IFLR) Americas Awardsにおいて、同分野の最優秀事務所に授与される CFIUS Team of the Yearを受賞したほか、日本製鉄によるU.S. Steel買収案件においてCFIUS承認取得に導いた実績により、Deal of the Year: M&Aも受賞しました。
[Warner Bros. Discovery(WBD)とParamountの合併において、WBDのグローバル規制対応を担当しました]メディア・エンターテインメント業界で過去最大級となる1,110億ドル規模の本件において、WBDのリード・グローバル規制カウンセルを務めました。競争法、外国投資規制、国家安全保障など幅広い分野で助言し、米国、EU、英国、中国、カナダ、ブラジルを含む世界各国・地域で約70件の競争法・外国投資規制上の承認を取得しました。
コビントンの競争法・独占禁止法プラクティスは、米国、欧州、アジアに140名を超える弁護士を擁し、企業結合審査、カルテル・政府当局による調査、競争法訴訟など、幅広い案件を手掛けています。米国司法省(DOJ)、連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会をはじめとする世界各国の競争当局対応に豊富な経験を有しており、競争当局で要職を務めた経験を持つ弁護士も多数在籍しています。こうした経験を活かした、当局の視点を踏まえた実践的な助言を強みとしています。
また、上記のWBD案件にみられるように、複数の国・地域にまたがる複雑な案件において、各法域の対応を綿密に連携させたグローバルな戦略を提供できることも大きな特徴です。日本企業への助言経験も豊富で、毎年複数の案件で日本企業の競争法対応を支援しています。
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