コビントン・バーリング法律事務所より、8月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
- 米国司法省、迅速な企業結合審査に向けて「Targeted Second Request」制度を再導入
- トランプ政権下で拡大する通商法301条措置と今後の見通し
- 強制労働執行タスクフォース、ウイグル強制労働防止法のエンティティ・リストに43社を追加し、強制労働規制の執行強化を示唆
- Broadcom事件に見るEU競争法調査における弁護士依頼者間秘匿特権の射程と実務上の留意点
- 英国雇用権利法による労働組合改革と企業への影響
- 米国エネルギー省「Genesis Mission」における278件のプロジェクト採択と留意点
[米国/競争法/企業結合審査]
米国司法省、迅速な企業結合審査に向けて「Targeted Second Request」制度を再導入
Antitrust Division Announces the Return of Expedited Second Request Investigations and New Model Timing Agreement
本稿では、米国司法省反トラスト局(DOJ Antitrust Division)が公表した、企業結合審査における対象を絞った「Second Request」調査およびこれに関連する「Model Timing Agreement」の概要を解説しています。新たな枠組みでは、当事会社が優先カストディアン(priority custodians)に関する資料等を先行提出(Priority Production)し、その内容を踏まえて反トラスト局が競争法上の懸念を解消できるか検討します。その後、反トラスト局は当事会社との協議を経て、調査終了、Second Requestの修正、または通常の調査継続のいずれかを判断することとなります。これにより、一部の案件では、全てのSecond Requestへの実質的遵守(substantial compliance)の認証を行うことなく審査が終了する可能性があります。
もっとも、Model Timing Agreementは、迅速な審査を受けられる可能性がある一方で、当事会社に対して一定の追加的負担も課しています。例えば、実質的遵守の認証後少なくとも60日間は取引を実行できないこと、取引実行前に14日間の事前通知が必要となること、追加カストディアンの要求や各種資料・データの提出期限、欠落資料への対応手続、宣誓証言(depositions)への協力義務等が定められています。また、司法省が取引差止訴訟を提起した場合には、司法省が別途仮差止命令等を取得しなくても当事会社が取引を実行しないこととする取り決めも含まれています。このため、迅速な解決というメリットと追加的なスケジュール制約や負担を比較衡量し、個別案件ごとにこの枠組みの利用が適切かを検討する必要があります。
[米国/通商・関税・サプライチェーン]
トランプ政権下で拡大する通商法301条措置と今後の見通し
Current and Forthcoming Section 301 Trade Actions by the Trump Administration
本稿では、トランプ政権が近時積極的に活用している通商法(Trade Act of 1974)301条に基づく関税措置および今後想定される追加措置について概説しています。通商法301条は、外国政府の措置・政策・慣行が米国の通商を不合理に阻害すると米国通商代表部(Office of the United States Trade Representative:USTR)が判断した場合に、関税などの対抗措置を講じることを認める制度です。2025年以降、USTRは複数の新たな調査を開始しており、一部案件では極めて短期間で調査を終えた上で追加関税を発動しています。また、2026年2月の米国最高裁判所によるIEEPA関税の違法判断を受け(この判断についてはこちらをご参照ください。)、トランプ政権は通商政策上の主要な執行手段として通商法301条に基づく措置を一層重視しています。具体的に、強制労働に関連する調査では、60の国・地域に対して10%から12.5%の関税措置が導入されており(この内容についてはこちらをご参照ください。)、その他にも複数の調査が継続中であり、近い将来に新たな措置が発表される可能性があります。現在進行中の調査は、中国関連分野に加え、半導体、海運・物流、人権・労働問題など多岐に及んでおり、対象国や対象産業がさらに拡大する可能性があります。企業にとっては、既存の通商法301条に基づく関税の適用状況だけでなく、今後の調査動向や追加措置の可能性を継続的に注視し、サプライチェーン、調達先、関税コストおよびコンプライアンスへの影響を早期に評価することが重要と考えられます。
[米国/通商・サプライチェーン/強制労働規制]
強制労働執行タスクフォース、ウイグル強制労働防止法のエンティティ・リストに43社を追加し、強制労働規制の執行強化を示唆
DHS Expands UFLPA Entity List Amid Intensifying Enforcement Landscape
本稿では、米国の強制労働執行タスクフォース(Forced Labor Enforcement Task Force:FLETF)が、ウイグル強制労働防止法(Uyghur Forced Labor Prevention Act:UFLPA)のエンティティ・リストに中国企業43社を追加した旨を解説しています。今回の追加はトランプ政権発足後初めての当該リストの更新であり、UFLPA施行以降で最大規模の拡大となります。追加対象には、アルミニウム、アパレル、綿花、トマトといったFLETFの重点執行分野に属する企業に加え、鉱業、医薬品、電子機器、エネルギー、輸送インフラ分野の企業も含まれています。FLETFによれば、これらの企業は新疆ウイグル自治区から原材料を調達している、または新疆地域からの政府主導の労働移転プログラムに関与していると判断されたためリストに追加されました。UFLPAの下では、エンティティ・リスト掲載企業によって製造された商品や新疆地域で生産された商品は、強制労働により生産されたものと推定され、米国への輸入が禁止されます。
今回のリスト拡大に加え、これまでのトランプ大統領による強制労働関連輸入品の取締強化を指示する大統領令の発令等を踏まえると、米国がグローバルサプライチェーンにおける強制労働問題への対応を一段と重視していることが示唆されます。こうした流れを踏まえ、各企業は、新たに追加された企業との取引関係の確認、サプライチェーン・マッピングの見直し、強制労働デューデリジェンス体制の強化、および代替調達先の検討等を含む対応を検討することが推奨されます。
[EU/競争法/コンプライアンス・調査対応/弁護士依頼者間秘匿特権]
Broadcom事件に見るEU競争法調査における弁護士依頼者間秘匿特権の射程と実務上の留意点
In or out? Navigating Legal Privilege in EU Competition Investigations post-Broadcom
本稿では、EU一般裁判所(EU General Court)長官が2026年8月3日に下したBroadcom事件の決定を取り上げ、EU競争法調査における弁護士依頼者間秘匿特権の適用範囲およびその実務上の意義について解説しています。本件では、Broadcomが、欧州委員会による情報提出命令について、米国法等に基づき秘匿特権が認められる文書の提出を求める点で違法であると主張しました。本決定は、EU法上の秘匿特権が保護される重要な防御権であることを強調する一方、社内弁護士による法的助言は保護対象に含まれないことを確認しています。
さらに、本決定は、EU域外の資格を有する外部弁護士による法的助言について、欧州委員会が国際礼譲(international comity)の観点から実務上その秘匿性を尊重する取扱いに一定の支持を与える内容となっています。本稿は、グローバルな競争法調査や複数法域にまたがる当局対応を行う企業にとって、外部弁護士とのコミュニケーションの管理や社内弁護士の法的助言の取扱いを検討する上で参考となる実務上の示唆を提供しています。なお、社内弁護士による法的助言については、提出命令の執行停止等の暫定的救済を得ることが困難となり得るものの、他法域における秘匿特権放棄のリスクを回避する観点から、その開示は欧州委員会による強制的な情報提出命令への対応に限定することが重要と考えられます。
[英国/労働法]
英国雇用権利法による労働組合改革と企業への影響
UK Employment Rights Act 2025 – A New Era for UK Trade Unions: Are Employers Ready?
本稿では、英国雇用権利法(Employment Rights Act 2025)により導入される労働組合関連制度の主要な改正内容について解説しています。同法の下では、労働組合を承認していない職場を含め、使用者は今後、労働組合および従業員との関係について明確な対応方針を検討する必要があります。具体的には、2026年10月30日以降、使用者は労働者に対し労働組合加入権を説明する書面を交付する義務を負うほか、労働組合は組織化、勧誘、代表活動および団体交渉等を目的として、職場への物理的およびデジタル上のアクセスを求める権利を有することとなります。また、Central Arbitration Committeeはアクセス取決めの履行を強制する権限を有し、一定の場合には最大50万ポンドの制裁金を課すことができます。さらに、法定の労働組合承認(union recognition)に関する要件も緩和される予定です。
こうした改正は、現在労働組合を承認していない企業を含む幅広い英国企業に影響を及ぼす可能性があります。そのため、企業は労働組合による職場アクセス要請への対応や、労働組合承認に向けた活動への対応方針を事前に検討するとともに、今後公表される実施法令および職場アクセス権に関する最終的なCode of Practiceの内容を継続的に注視することが重要となります。
[米国/政府契約/補助金/研究開発]
米国エネルギー省「Genesis Mission」における278件のプロジェクト採択と留意点
Department of Energy Selects 278 Genesis Mission Projects
本稿では、米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)が推進するAI活用研究プログラム「Genesis Mission」において、新たに278件のプロジェクトが採択候補として選定されたことを紹介しています(このプログラムについてはこちらの過去の記事もご参照ください。)。採択候補となったプロジェクトは、原子力エネルギー、量子コンピューティング、先端製造技術、材料科学など幅広い分野に及びます。また、採択候補案件のうち、DOEおよび国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration)の国立研究所、大学、企業および非営利団体がそれぞれプロジェクトを主導しており、参加機関には多数の研究機関、大学および企業が含まれています。
採択候補となった営利企業は、DOEとの間で「Other Transaction(OT)」契約の条件交渉を行う必要があります。OT契約は、連邦政府調達契約や通常の補助金・協力協定と比較して柔軟な条件設定が可能である一方、DOEがプロジェクトを通じて創出された知的財産について広範な政府利用権や国内製造義務等の権利を求めることを可能にします。特に、AI技術を活用するプロジェクトでは、その成果物や知的財産の価値が大きくなる可能性があるため、採択候補企業はDOEが提示する契約条件の利点と負担を十分に評価することが重要です。
[The American Lawyer Law Firm of the Yearの最終候補入りを果たしました] Covingtonは、The American Lawyer の2026 Industry Awardsにおいて、Law Firm of the Yearの最終候補に選ばれたほか、Health Care/Pharma部門及びSmall/Mid Cap部門のBest Corporate Practice of the Year、並びにMedia Advocacy Award の3つの部門でも最終候補に選出されました。
[ジャパンプラクティス共同代表木本がLos Angeles Times誌の選ぶ「Private Equity and M&A Visionaries」に選出されました] これは、南カリフォルニアのプライベート・エクイティおよびM&A分野において、企業変革や成長を支える優れた法律・ビジネスリーダーを表彰するもので、木本はChambers等でもクロスボーダー取引のリーダーとして高い評価を受けています。また、M&Aやプライベート・エクイティ取引に関する税務ストラクチャリングの第一人者であるKate Krausも選出されています。
[Law360 Rising Stars 2026に全法律事務所最多の8名が選出されました]コビントンからは、90以上の法律事務所の中で最多の8名の弁護士が選出されています。各弁護士の専門分野とLaw 360によるRising Starプロファイルは下記にてご覧ください。
[Lexology Index: Competition 2026で高い評価を得ました] これは競争法・独占禁止法分野の世界的な専門家を選出するもので、Thomas BarnettとJohan Ysewynが「Global Elite Thought Leaders」に選出されたほか、総勢18名の弁護士が表彰されています。
コビントンのAntitrust & Competition プラクティスは、米国、欧州、アジアに140名超の弁護士を擁し、企業結合審査等トランズアクション、カルテルその他の競争当局調査、独占禁止訴訟を含む競争法分野全般を取り扱っています。米国司法省(DOJ)、連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会をはじめとする主要な競争当局の元高官をチームに擁し、当局対応に豊富な実績を有しています。さらに、先述のLexology Indexで高く評価されているとおり、世界の主要法域に層の厚い専門家チームを有しており、複数国で同時並行的に進む企業結合審査や当局調査、訴訟などの複雑な案件においても、各法域のチームが連携しながら一貫した戦略を提供できる点がコビントンの大きな強みとなっています。
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Germany Life Sciences Update - Spotlight: Pharmaceutical Pricing & Reimbursement September 9, 10:00 AM – 11:00 AM EDT
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