コビントン・バーリング法律事務所より、3月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) 米国司法省、部門横断的な企業取締りポリシーを発表
2) CFIUSおよび関連規制の動向 - 効率化と執行強化
3) IEEPA関税とクラスアクション
4) 控訴裁判所、HSR Final Ruleを無効とした連邦地裁判決の効力停止申
立てを却下
5) テック分野におけるM&Aと独占禁止法の動向
6) 米国におけるテクノロジー産業の動向とM&A
7) 中東紛争に起因する損失に備える保険補償戦略
8) 英国による対ロシア制裁の追加指定、EUによる第20次制裁パ
ッケージの採択遅延
[米国/DOJ/ホワイトカラー犯罪/コンプライアンス]
米国司法省、部門横断的な企業取締りポリシーを発表
DOJ Issues Department-Wide Criminal Corporate Enforcement Policy
2026年3月10日、米国司法省(Department of Justice:“DOJ”)は、反トラスト部門を除く刑事執行を担う各部門に適用される新たな企業取締り及び自主的報告ポリシー(“本ポリシー”)を公表しました。本ポリシーの公表に伴い、米国ニューヨーク南部地区連邦検察局(the U.S. Attorney’s Office for the Southern District of New York)の自主的報告プログラム(当該プログラムについては、こちらをご確認ください。)等の各部門におけるプログラムは、本ポリシーにより置き換えられることとなりました。
本ポリシーの基本的な構造は従来と同様であり、企業が違反行為を自主的に報告し、当局の調査に全面的に協力し、かつ適時かつ適切な是正措置を講じた場合には、原則として違法行為によって得た利益の返還や没収を伴う不起訴が認められるとされています。その上で、本稿では、①自主的報告と認められる範囲、②企業に期待される協力義務の内容(DOJが企業に対する協力義務について高い期待を示していることについては、こちら、こちら、及びこちらをご確認ください。)、③考慮される「加重要件」の内容、④自主的報告の要件を満たさない自発的な開示に与えられる恩恵の内容について、2025年5月に公表された刑事局のポリシー等との相違点を踏まえて解説しています。また、本稿では、従来独自のポリシーを有していた各部局が本ポリシーをどのように適用するのかといった本ポリシーの運用面における疑問点についても解説しています。
[米国/CFIUS]
CFIUSおよび関連規制の動向- 効率化と執行強化
Efficiencies and Enforcement: Trends in CFIUS and Related Regulations
トランプ政権下におけるCFIUSおよび関連規制の最新の動向の特徴は、「効率化」と「執行強化」です。
「効率化」については、Known Investor Program(KIP)を通じた審査プロセスの効率化や、ミティゲーションに伴う負担を軽減するための各種措置が挙げられます。他方で、KIPについては、提出が求められる情報の範囲が広く、実務負担が大きい点や、審査期間の短縮といった具体的なメリットが現時点では明確に示されていない点が課題として指摘されています。また、CFIUSの運用は案件ごとに異なり、関与する省庁や人員体制等が審査スピードや結果に影響を及ぼす点にも留意が必要です。さらに、ミティゲーションについても、防衛産業分野や、特に中国との関係を有する取引においては、当局から引き続き強い関心が向けられている状況にあります。
「執行強化」については、最近、司法省が大統領命令に基づく事業売却の履行を求めて訴訟を提起した事例が象徴的であり、CFIUSに基づく是正措置が履行されない場合には、司法的手段を含む厳格な執行を辞さない姿勢が示されています。
これらの動向は、CFIUS委員会が、頻繁に取引を行う投資家については手続負担の軽減を志向する一方で、リスクの高い案件については是正措置の実効性を重視し、厳格な執行を行う姿勢を明確にしていることを示しています。この点で、CFIUS対応については、個別案件にとどまらず、包括的かつ中長期的な観点から戦略を検討する重要性が改めて示されているといえます。
[米国/クラスアクション/IEEPA関税]
IEEPA関税とクラスアクション
Consumer Class Actions Arising from IEEPA Tariff Refund Efforts
米国連邦最高裁が、IEEPAに基づく関税賦課を無効と判断したことを受け、多数の輸入業者が国際貿易裁判所に対し、違法に徴収されたIEEPA関税の返還を求める訴訟を提起しています。その一方で、消費者が、IEEPA関税の返還を受ける可能性のある輸入業者に対し、その分配を求めて提訴する動きがみられます。これらの訴訟では、IEEPA関税に対応して消費者に転嫁された関税分について、不当利得、契約違反、及び州法上の不公正・欺瞞的取引の禁止規定等を根拠に、返還義務があると主張されています。
もっとも、現時点では政府による返還は一切行われていないため、多くの訴訟においては、原告適格や紛争の成熟性の欠如といった訴訟要件の段階から問題となる可能性が高いと考えられます。また、企業の利用規約に含まれる仲裁条項やクラスアクション放棄条項も、重要な争点となり得ます。
さらに、実体面においても、取引当時において関税は適法であったことや、価格は関税以外のさまざまな要因によって変動し得るものであること等に鑑みれば、原告の主張を立証することは必ずしも容易ではないと考えられます。
最終的な訴訟リスクは、各社の輸入実務、契約内容、関税の転嫁方法、政府に対する返還請求の有無等の個別事情に大きく左右されるため、IEEPA関税を支払った企業は、その返還戦略や訴訟リスクを慎重に検討する必要があります。
[米国/競争法/HSR/司法判断]
控訴裁判所、HSR Final Ruleを無効とした連邦地裁判決の効力停止申立てを却下
Fifth Circuit Denies FTC Motion to Stay Order Vacating Revised HSR Rules
第5巡回区連邦控訴裁判所は、2025年2月に施行された米国Hart Scott Rodino法(“HSR法”)に基づく事前届出規則(いわゆるHSR Final Rule)を無効としたテキサス州東部地区連邦地方裁判所の判決の効力停止を求める連邦取引委員会(Federal Trade Commission:“FTC”)の申立てを却下しました(当該判決については、こちらもご確認ください。)。
これを受けて、FTCは、速やかに声明を公表し、2025年2月10日より前に使用されていた届出様式及び記載要領に基づく届出を受理すること、また、裁判所の命令を反映するため、ウェブサイトの更新作業を進めていることを明らかにしました。一方で、FTCは、新様式による届出も可能であるとしています。もっとも、多くのケースでは新様式の方が要求される情報量が多いことに留意が必要です。
なお、HSR Final Ruleを無効とした連邦地方裁判所の判決に対するFTCの控訴自体は引き続き係属中です。
[米国/M&A/テクノロジー/独占禁止法]
テック分野におけるM&Aと独占禁止法の動向
U.S. Antitrust Trends for Tech
政権交代から1年が経過し、テクノロジー分野のM&Aに対する独禁当局の姿勢は明らかに変化しています。
現政権では、テック企業がどの程度利用者の行動に制限をかけるかという点を、検閲(censorship)を理由とする独禁法違反の可能性がある行為として調査対象とする新たな方針が言及されています。また、当局は、住宅や医療、生活必需品など家計に直結する市場を保護することを「America First Antitrust」の原則として掲げています。
一方で、全体としての取引環境は、以前と比べてやや柔軟になったとの印象もあり、特に企業結合における是正措置については、構造的是正を中心に、和解に前向きな姿勢が明確に示されています。
米国内においては、連邦当局に加えて州当局の役割が拡大しています。ワシントン州やコロラド州は既に業種を限定しない事前合併届出制度を導入しており、カリフォルニア州やコロンビア特別区等の他の州でも同様の立法が検討されています。
取引スキームの観点では、 “アクハイア(acqui-hire)”、人材獲得目的の買収の一部はHSRの届出対象とならない場合がありますが、現政権は明確な公式見解を示しておらず、競争上の懸念を理由とする執行措置も現時点では講じられていないため、引き続き動向を注視する必要があります。
[米国/M&A/テクノロジー/AI/プライバシー規制]
米国におけるテクノロジー産業の動向とM&A
Technology Industry Trends and M&A Outlook in the U.S.
近年の大型のM&Aは、デジタルインフラ、データセンター、人工知能(AI)といったテクノロジーを主眼とする取引が中心となっています。こうしたテクノロジー関連取引を実行するにあたっては、変化の激しい米国の規制動向を慎重に考慮することが不可欠です。
米国では、連邦レベルで包括的なプライバシー法やAI全般に適用される業種横断的な法律は存在しない一方、HIPAAやGLBAといった分野別の連邦法に加え、全米で約20州以上が包括的な州プライバシー法を制定しています。さらに、AIなど特定の技術を対象とする州法や規制も増加しており、個人データの利用、開示、管理をめぐる法的要件は極めて複雑な状況にあります。このような規制のパッチワークの中でテクノロジーを主眼とするM&Aや戦略的取引を行うためには、規制環境が対象資産やビジネスモデルの商業的価値にどのような影響を及ぼし得るのかを慎重に見極める必要があります。
米国におけるプライバシー、サイバーセキュリティ、AIをめぐる規制は現在も進化を続けており、テクノロジー関連取引に実質的な影響を与えています。取引を成功に導くためには、現行の規制および今後導入され得る規制を的確に把握した上で、それらの動向を踏まえた対応が求められます。
本記事は、テクノロジー関連取引を検討・実行する際に重要となる米国の規制動向について概説しています。
[保険/中東紛争]
中東紛争に起因する損失に備える保険補償戦略
Insurance Coverage Strategies for Losses Arising from the Middle East Conflict
中東での軍事衝突の激化やサプライチェーンの混乱、サイバー攻撃の増加により、企業活動への影響や損失リスクが高まっています。こうした状況を受け、企業には、現在加入している保険がどのような損失に対応し得るのかを見直し、必要に応じて補償内容を強化することが求められています。多くの企業向け保険には「戦争除外条項」(“war exclusions”)がありますが、その適用可否は保険約款の文言や損失の内容次第であり、紛争に関連する損失であっても補償される可能性があります。実際、ロシア軍がウクライナ内のターゲットを標的として商用会計ソフトウェアを通じて展開したマルウェアに起因する物的損害及び事業中断損害について、戦争免責条項が適用されるかが争われた事案では、裁判所が当事務所の主張を認め、当該損失について戦争除外条項の適用が否定しました。また、当事務所は、ウクライナ戦争に関連する航空関連損失について、戦争免責条項の有無を問わず、顧客が多額の保険金を回収した実績を有しています。
本稿では、上記判断の具体的な内容を紹介するとともに、主要な補償上の検討ポイントを整理し、保険契約者が回収を最大化し、新たなリスクに備えるために今すぐ取るべき対応を示しています。
[ロシア/UK/EU/制裁]
英国による対ロシア制裁の追加指定、EUによる第20次制裁パッケージの採択遅延
United Kingdom Adds New Russia Sanctions Designations; EU 20th Sanctions Package Delayed
英国は、新たに多数の企業、個人及び船舶を資産凍結の対象に指定しました。具体的には、ロシア最大の石油パイプライン運営会社を含むエネルギー企業や、ロシアによるエネルギー輸出やロシアの軍隊で使用されている機器等の供給に関与しているアラブ首長国連邦、中国、香港の企業等を追加の制裁対象としています。これにより、英国の制裁の管轄下にある者は、許可がない限り、新たに指定された企業等や、当該企業等に支配されている第三者との取引を広く制限されることになります。
一方、EUでは、第20次対ロシア制裁パッケージの採択が予定されていましたが、ハンガリー及びスロバキアの反対により、その採択が遅れています。このパッケージには、①ロシアの銀行、ロシアとの取引を推進している第三国の銀行を資産凍結の対象に追加、②ロシアの原油輸出に関連する海上サービスの禁止を拡大、③ゴム製品やトラクター等の幅広い製品を新たな輸出規制の対象に、④鉄や化学製品等を新たな輸入規制の対象にする内容を含んでいます。さらに、このパッケージは、⑤ロシアへの再輸出リスクが高い区域に対する特定のCNC工作機械及び無線機器の輸出制限も導入しています。
[米国商務省副長官を務めたBruce AndrewsがNHKのインタビューに応じました] 昨年12月にコビントンに入所したAndrewsは、米国商務省をはじめとする行政機関や連邦議会での長年の実務経験を活かし、グローバル企業に戦略的なアドバイスを提供しています。コビントン入所前は、インテルにおいてChief Government Affairs Officer and Senior Vice Presidentを務めたほか、ソフトバンクグループではManaging Partner and Senior Vice President for Global Public Policyを務めました。
[4月30日にBoston Life Sciences Symposiumを開催します] 元FDA長官代理、FDA首席副長官、及びFDA 医薬品評価研究センター所長を歴任したJanet Woodcock 博士やRA Capital Managementの創業者兼マネージング・パートナーであるPeter Kolchinsky博士をはじめとする、ライフサイエンス業界を牽引するリーダーによる対談・講演と、コビントンの弁護士による実践的なセッションを予定しています。
[ライフサイエンストランズアクションを専門とするGeorgina Jones Suzukiがパロアルトオフィスに加入しました]ライセンス、技術移転、JV、M&A、事業売却、供給・流通契約、ロイヤルティの収益化、その他多岐にわたる複雑な戦略的取引について助言を行っています。ライフサイエンス分野での活躍が認められ、2025年にはWoman Leader in Tech Lawに選出されています。
コビントンは、85名超の弁護士からなるトップクラスのデータプライバシー&サイバーセキュリティ・プラクティスを有しており、30年以上にわたり、世界中のクライアントに助言を提供してきました。最近は、日本を拠点とする企業からの、プライバシーポリシーや利用規約をはじめとする消費者向け開示文書のレビューに関する相談が増加しています。これは、日本のプライバシー規制当局が個人情報保護法に関する制度改正方針を公表したことに加え、約275万ドルのディズニーとの和解や約110万ドルのPlayOn Sportsとの和解に見られるとおり、カリフォルニア州司法長官やカリフォルニア州プライバシー保護庁(CPPA)をはじめとする米国の規制当局が、プライバシー規制の執行に積極的な姿勢を示していることが背景にあります。このような動向を踏まえると、日本企業にとって、グローバルなプライバシー規制への対応は、ますます重要な経営課題の一つとなっています。コビントンの Inside Privacy ブログでは、米国・英国・EUを網羅するグローバルなデータプライバシー&サイバーセキュリティ分野の最新動向を随時ご紹介しています。ぜひこちらからご登録ください。
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