コビントン・バーリング法律事務所より、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年も格別のご厚情を賜り、心より感謝申し上げます。昨年を振り返りますと、1月の第二期トランプ政権発足後から関税、移民、対中国その他の新政策が怒涛のように打ち出され世界中が振り回される中、日本では高市首相が初の女性首相に就任いたしました。また、弊事務所が米政権との交渉について主導しました日本製鉄のUSスチールの買収案件を始め、引き続き多くの日本企業の皆様は力強く事業を推し進めていかれていると感じます。
企業の命運をかけた案件から日常の相談事に至るまで幅広い分野において、多くの日本企業の皆様の支えとなれるよう弊事務所所員一同精進してまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) 欧州委員会によるデジタルオムニバスパッケージの提示
2) 2026年度米国国防権限法(FY 2026 NDAA)成立に伴う新たな経済制
裁
3) Foreign Private Issuerの役員に対する自己株式に関する開示義務の創設
4) イギリスのThe Employment Rights Billに関するアップデート
5) 軽トラックに関する米国の規制障壁
Pick Up
[Data Privacy/AI/GDPR/EU/デジタルオムニバス]
欧州委員会によるデジタルオムニバスパッケージの提示
European Commission Proposes Revisions to GDPR and Other Digital Rules Under Digital Omnibus Package
Digital Omnibus Package Series: European Commission’s Proposal to Revise the EU's AI Rules
2025年11月19日、欧州委員会(European Commission)はデジタルオムニバスパッケージを提示しました(詳細については、“Digital Omnibus Regulation Proposal”と“Digital Omnibus on AI Regulation Proposal”をご参照ください。)。デジタルオムニバスパッケージはEUのデジタル規制を包括的にアップデートするものであり、欧州委員会は、これを企業の行政負担軽減と法的確実性の向上を目的とする競争力強化・簡素化イニシアチブと位置付けています。欧州議会及び欧州理事会との協議過程において改訂される可能性がありますが、現行案が採択されれば、データ保護義務、クッキー規則、サイバーセキュリティ規制、AI法において重大な変更となる見込みです。
デジタルオムニバスパッケージは、2つの規制案で構成されます。すなわち、一般データ保護規則(GDPR)、eプライバシー指令、NIS2指令及びデータ法を改正する「デジタルオムニバス」と、AI法を改正する「AIに関するデジタルオムニバス」です。
一つ目の記事では、「デジタルオムニバス」について解説しています。「デジタルオムニバス」の主要な内容は、①個人データの定義の見直し、②AI開発・導入に関する特例、③「科学研究」活動に関する明確な規則、④データ主体の権利に対する免除範囲の拡大、⑤クッキー規則の更新、⑥EU全域データ侵害報告テンプレートと通知プラットフォーム⑦データ保護影響評価(DPIA)ガイダンスとテンプレートです。
二つ目の記事では、「AIに関するデジタルオムニバス」の主要な内容について解説しています。「AIに関するデジタルオムニバス」の主要な内容は①AIリテラシー義務の転換、②バイアス軽減を目的とするセンシティブデータの処理についての法的根拠の拡大、③AI法第6条(3)の適用除外対象となるAIシステムの要件の簡素化、④中小企業(SME)、中堅規模企業(SMC)向けの規則の簡素化、⑤適合性評価に関する規則の明確化、⑥AI規制サンドボックスに関する規則の修正、⑦監督・執行体制の明確化、⑧(特定の規定の発効時期に関する)タイムラインのアップデートです。
[米国/経済制裁/NDAA]
2026年度米国国防権限法(FY 2026 NDAA)成立に伴う新たな経済制裁
New Sanctions Authorities in the FY 2026 NDAA
本記事では、上記記事でも言及した2026年度米国国防権限法(FY 2026 NDAA)による経済制裁に関する改正内容を解説しています。具体的には、いわゆるBIOSECURE Actがこの法律(Section 851)に組み込まれたことより、米国政府機関による「懸念のあるバイオテクノロジー企業」(biotechnology companies of concern)(“BCOC”)からの製品・サービスの調達が禁止され、政府契約を履行する請負業者・下請業者も、BCOCの製品・サービスを使用することが禁止される可能性があります(詳細については、こちらの記事もご確認ください。)。2点目として、いわゆるCOINS Actがこの法律(Sections 8511-13)に組み込まれたことにより、大統領は、アメリカ人による特定の中国関係者(中国・香港・マカオに関係し、防衛関連物資や監視技術分野に関して重要な事業を行う企業・個人が含まれます。)の株式・債券(非上場のものも対象)への大量投資が禁止できることとなります(なお、対外投資規制制度に関する関連する内容についてはこちらの記事もご確認ください。)。また、3点目として、シリア制裁との関係では、2024年後半にアサド政権が崩壊して以降、シリアに対する制裁措置は緩和されてきていましたが、FY 2026 NDAAによって、シーザー法(Caesar Syria Civilian Protection Act of 2019)が正式に廃止され、より的を絞った制裁を課す裁量権が大統領に付与されます(もっとも、シリアは「テロ支援国家」に引き続き指定されています。)。さらに、FY 2026 NDAAによって、フェンタニル取引に関する中国及びオピオイド密売を認識したうえで支援する外国政府関係者に対する制裁権限が拡大されます。また、FY 2026 NDAAにより、西バルカン地域の平和等を脅かす行為の関与者に対する資産凍結及びビザ制裁を義務化するなどの制度や、アメリカ人の不法・不当な拘束に関与する国を“State Sponsors of Unlawful or Wrongful Detention”として指定できる制度等も創設されることになります。
[証券法/米国/コーポレート・ガバナンス]
Foreign Private Issuerの役員に対する自己株式に関する開示義務の創設
Big Changes Coming For Officers and Directors of Foreign Companies: U.S. Congress Mandates Reporting Securities Trades
2025年12月18日、2026年度米国国防権限法(National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2026; “FY 2026 NDAA”)が成立しました。これにより、米国に上場している外国企業(Foreign Private Issuer; “FPI”)の役員(Officers and Directors)に対する開示規制が大きく変更されます。すなわち、従前、FPIの役員は、米国証券取引法(Securities Exchange Act of 1934)のSection 16に基づく米国上場企業の役員に課される自社株式の保有状況や取引内容の開示義務を免除されていましたが、今回の改正により、この取扱いが見直されることになります。具体的には、米国に上場しているFPIの役員は、今後、自社株式の保有状況や取引内容について、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission; “SEC”)所定のフォーム(Form 3, 4, 5)を提出しなければならなくなります。もっとも、FY 2026 NDAAによる改正については不明瞭な点も多く、こうした点はSECにより検討される必要があり、米国議会はSECに対して、FY 2026 NDAAの施行後90日以内に具体的な規則を整備するよう指示しています。例えば、現在は、FPIについて、役員だけでなく10%以上の株式を保有する大株主も上記開示義務の免除対象とされていますが、FY 2026 NDAAでは大株主の開示義務については触れられておらず、SECが、今後こうした大株主にまで開示義務の対象を広げていくのかは未定となっています。また、FPIの役員による各フォームの提出開始時期についても、現時点では明確ではありません。さらに、FY 2026 NDAAが改正しているのは米国証券取引法のSection 16の(a)項に限られていますが、6か月以内の売買による短期利益の返還を求める(b)項や、空売りを禁止する(c)項もこれまでFPIに関しては適用が免除されていましたが、FPIに対するこれらの条項の適用の有無についても現時点では不明となっています。その他、新しく開示義務の対象となる者に対して、SECの電子開示システムであるEDGAR(Electronic Data, Gathering, Analysis and Retrieval)Nextのコードを取得させる手続等についても実務上の問題が生じます。
[労働法/UK/The Employment Rights Bill]
イギリスのThe Employment Rights Billに関するアップデート
UK Employment Rights Bill - The Most Radical Employment Law Changes in a Generation
New UK Employment Rights Bill - Political Background to the Watering Down of the UK Employment Rights Bill - Latest Developments and Context
イギリスでは、2024年10月にThe Employment Rights Bill (“ERB”)が提出されました(ERBに関しては、こちらの記事もご確認ください。)が、これは2025年12月18日に法律として成立しました。この法律は、2027年までの間に段階的に施行される予定です(イギリス政府によるロードマップはこちらをご確認ください。)。弊所は、今後ERBに関する複数のアラートを投稿する予定ですが、ここでは以下の二つの記事を紹介いたします。
一つ目の記事では、2026年4月に施行することが予定されている4つの主な改正内容について解説しています。具体的には、①勤続要件なしで取得できるパタニティリーブ(Paternity Leave)と無給の育児休暇(Unpaid Parental Leave)、②セクシャルハラスメントに関する通報を明確に保護対象とする内部通報制度の強化、③大量解雇(large-scale redundancies)における協議義務違反の保護手当(protective award)の上限が、従業員一人につき180日分の賃金へと倍増される点、④労働市場規制を幅広く執行し、労働者に代わって雇用審判手続きを開始する権限を持つ新たな公的機関であるFair Work Agencyが設立される点について、解説しています。この法律の多くは、細目等によって今後具体化されるため、関連する企業は継続的に動向を注視し、内部規則等の見直しに備える必要があります。
二つ目の記事では、労働党が、当初はERBにおいて不当解雇保護を勤続初日から適用させることを目指していた中で、成立した法律では、適用開始時期が勤続初日ではなく勤続開始から6か月以降となった経緯等について解説しています(なお、改正前の法律では、勤続開始から2年以降になって当該保護が適用されていました。)。詳細は記事をご確認いただければと思いますが、この法改正の際には、労働者側の利益と企業側の利益の調整が必要であったこと、貴族院におけるERBの審議が大幅に遅れていたこと、勤続初日からの不当解雇保護の適用を認めるとイギリス経済の低成長が継続する懸念があること、経済促進策が乏しい予算案について企業側からの懸念が示されたことから、一定の譲歩が必要となり、最終的に上記のような内容になりました(他方で、当該保護に関する請求の法定上限は撤廃されており、当初案より労働者側にとって有利な内容も盛り込まれています。)。
[軽トラック/米国/NHTSA/FMVSS]
軽トラックに関する米国の規制障壁
Kei Trucks and U.S. Regulation: Opportunities and Obstacles Ahead
軽トラック(又はマイクロトラック)は、米国において長年熱狂的な支持を得てきたにもかかわらず、規制上の障壁がその大量生産と販売を妨げてきました。
トランプ大統領は、12月3日の記者会見で、米国での軽トラックおよび軽自動車の生産を「直ちに承認するよう(ショーン・ダフィー運輸長官に)指示した」と発表し、同運輸長官は、同記者会見で軽トラックの生産を禁止する規制について、運輸省が「障害を取り除いた」と述べました。
それにもかかわらず、軽トラックの販売と使用を制限する規制上の障壁は依然として存在します。軽トラックは、一般的な自動車よりも小型であるため、衝突安全に関する数多くの連邦自動車安全基準(FMVSS)の遵守が困難です。現在米国の道路で走行している軽トラックは、25年以上経過した輸入車のFMVSS適合認証を輸入業者に義務付けないという、米国国家道路交通安全局(NHTSA)の規則に基づいて許可されていますが、高速道路での使用を目的とした新型軽トラックは事実上禁止されています。
自動車メーカーは、現在の規制緩和の流れにおいて、高速道路での使用を目的とした新型軽トラックの商用化の実現可能性を見出せる可能性があります。運輸省(DOT)は「安全性を向上させない負担の大きい規制の撤廃・廃止・改正」への取り組みを表明しており、規制改革タスクフォースは既に複数のFMVSS(連邦自動車安全基準)規定を改正または廃止する規則制定を提案しています。NHTSAも同様に、49 CFR 571に基づく低速車両と同様に、特定のFMVSSの軽トラックへの適用を変更する規則の制定を開始する可能性があります。
コビントンの車両安全チームは、自動車メーカーによる米国の規制障壁の削減に関する戦略の策定・実施を支援させていただきます。ご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
News
[Covington European Life Sciences Symposiumがロンドンで開催されます]ライフサイエンス企業からのゲストスピーカーを迎え、弊事務所の専門家と、ライフサイエンス業界におけるリーガル/ビジネス動向を分析し、2026年の展望につき議論します。
- 日時:2026年1月22日9:00-18:00(London time)
- 場所:Convene @ 22 Bishopsgate, London
- アジェンダ:こちらでご覧いただけます。
[今年で7回目となるAnnual Technology Forumが開催されます] 1月28-30日の3日間にわたり、各日90分、専門家による解説に続き、イノベーションの最前線で活躍するリーダーたちとの対話を行うIndustry Spotlightセッションをオンラインでお届けします。
Day 1: Risks & Opportunities from Recent Policy Shifts
Day 2: Key Considerations When Tech Travels: Cross-Border
Considerations
Day 3: Latest Developments in Innovative Technologies
[UK A-List 2025でトップに輝きました] UK A-List はLaw.com Internationalが、弁護士1人あたりの収益、プロボノ活動への取り組み、アソシエイトの満足度、人種・ジェンダー多様性をもとに在英国法律事務所を評価するランキングで、2022年に開始されて以来、コビントンは毎年選出されており、第一位となるのはこれで2年連続となります。
[The Hill 誌の選ぶTop Lobbyistsリストに選出されました] Holly Fechner(13年連続), Bill Wichterman(11年連続), 及び Stephen Rademaker(2年連続) の3名がそれぞれ選出されています。
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