March 2024 Monthly Roundup/2024年03月 米国・グローバル最新トピックのご紹介- Covington
March 2024
今月のPick Up記事は下記になります。
1)国家安全保障関連規制の2024年の展望
2) EU対内直接投資審査規制の改革
3) AI規制に関する最新の立法動向
4)欧州委員会、AIイノベーション戦略とAIオフィスの導入を公表
5)米国独禁当局が企業の文書保全義務に関する声明を公表
6)米国クラスアクションの最新判例
ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
Pick Up
[米国/国家安全保障/CFIUS]
国家安全保障関連規制の2024年の展望
The Year Ahead in National Security Regulation
2024年は、昨年に引き続き、世界的に国家安全保障の関連規制が強化されることが予想されます。とりわけ、米国では、対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States、以下「CFIUS」といいます。)の権限拡大、対外投資規制に関する法令の制定、センシティブ情報の移転に関する大統領令の発令、バイオテクノロジー分野のリスクへの対応などが議論されており、いずれも注目に値します。また、対中政策拡大に向けた世論の圧力や、ロシア・ウクライナや中東における不安定な国際情勢などを受けて、CFIUSの審査が厳格化する見込みです。加えて、世界的には、外国投資審査を多国間の協働で行う体制が検討されており、特に欧州連合で導入が予想される新たな仕組みには注視が必要です。2024年は、幅広い産業分野の企業においても、新規制を視野に入れたうえで企業戦略を検討することが不可欠となります。
[EU/海外投資/国家安全保障]
EU対内直接投資審査規制の改革
Draft EU Screening Regulation – a new chapter for screening foreign direct investments in the EU
2024年1月24日、欧州委員会は、対内直接投資審査規則の改正案(以下「改正案」)を含む、欧州経済安全保障パッケージ(European Economic Security Package、以下「EESP」)を公表しました。改正案においては、EU域内に設立された子会社を通じたEU域外の投資家による間接的な投資やグリーンフィールドでの事業立ち上げ等を含むようにする規制対象範囲の拡大、全加盟国に対する審査の最低基準の導入、クロージング後15ヶ月間にわたる遡及的な審査に係る権限の導入、懸念が生じる可能性の低い投資に関する手続きの負担軽減措置等が含まれています。改正案は、EU全体での対内直接投資のスクリーニングについて、より包括的で一貫性のある規制内容及び手続きを定めるものであり、今後、欧州議会及び欧州理事会において、提案どおりに改正案が採択されれば、EU全体での対内直接投資の審査制度に重大な変更をもたらすことになります。
[AI/立法動向/自動意思決定ツール]
AI規制に関する最新の立法動向
Trends in AI: U.S. State Legislative Developments
米国では、連邦レベルのみならず各州においても、人工知能(AI)使用に係る規制が進展しており、特に雇用者による意思決定場面での使用を念頭に、1)個人(労働者)への通知要件、2)影響評価及び3)個人の権利に焦点を当てた法案が多く提案されています。1)個人への通知要件に関し、コロンビア特別地区及びマサチューセッツ州においては、雇用者が、個人の権利や機会に影響を与える意思決定をする場面において自動意思決定ツールを使用する場合、対象事業者である雇用者には、影響を受ける個人への通知が義務付けられます。また、2)影響評価に関し、バーモント州においては、雇用関連の意思決定に際し自動意思決定ツールを使用する雇用者は、使用の前に、アルゴリズムによる影響評価の実施が義務付けられます。さらに、3)カリフォルニア州及びニューヨーク州においては、自動意思決定ツールが意思決定に使用されている又は意思決定の主要因となっている場合、影響を受ける個人が、AI導入者に対し、当該決定結果をオプトアウトし、代替プロセスを要求することができる権利を設ける法案を検討しています。その他、一部の州では特定のAIシステムの使用に際してのライセンス制度が検討されている等、AI規制は黎明期にあることから、企業やシステム開発者は、適用される州ごとの法規制を確認し、遵守する必要があります。
[AI/EU/AIイノベーション戦略/AIオフィス]
欧州委員会、AIイノベーション戦略とAIオフィスの導入を公表
European Commission Announces New Package of AI Measures
2024年1月24日、欧州委員会は、2023年12月にEU AI法(EU AI Act)について政治的合意に達したことを受け、EU域内のAIスタートアップと中小企業をサポートするためのAIイノベーション戦略を公表しました。また、これと同時に、2024年2月21日に運用を開始する欧州AIオフィス(European AI Office、以下「AIオフィス」)の設立も公表しました。AIイノベーション戦略は、EUが、信頼できる先進的なAIモデル、システム及びアプリケーションのグローバルリーダーとなるための戦略であり、AIモデルやアプリケーションのさらなる開発を目指すための「AIファクトリー」の設立や、生成AIに特化した約40億ユーロの投資パッケージ等が計画されています。AIオフィスは、欧州委員会及びEU加盟国の各機関と協力し、EU AI法の実施と執行をサポートします。これらの公表は、EUがAI関連のインフラに投資し、他の法域に先駆けて包括的なAI規制のフレームワークを構築するとのコミットメントを示すものといえます。
[米国/独占禁止法/不正調査/訴訟/文書保全]
米国独禁当局が企業の文書保全義務に関する声明を公表
Antitrust Agencies Clarify Their Position on Companies’ Preservation Obligations: Ephemeral Messaging Platforms and Collaboration Tools
米国の司法省(Department of Justice、以下「DOJ」といいます。)及び連邦取引委員会(Federal Trade Commission、以下「FTC」といいます。)は、2024年1月26日、米国政府による調査又は訴訟の対象となる企業に対して文書保全等を求める際に発する書簡の文言を改定する旨の声明を公表しました。これは、企業の負う文書保全義務の内容を明確にするもので、とりわけ、近年、文書共同作成環境(SharePoint、Google Drive、iManage等)や一定期間経過後に自動削除されるエフェメラル・メッセージ(WhatsApp、Signal、Telegram等における機能)の普及により、重要な情報を保全しづらくなったことへの懸念に対応しようとするものです。企業においては、今後、これらの新たなプラットフォーム上の情報も適切に保全することが期待されることから、文書保全や個人端末の利用等に関する社内規定を改めて見直すことが望まれます。
[米国/訴訟/クラスアクション]
米国クラスアクションの最新判例
Inside Class Actions Quarterly Update
本ブログでは、米国のクラスアクションの最新判例のうち重要性の高いものをご紹介しています。今回ご紹介する判例の一つは、カリフォルニア州在住の原告が、カナダ籍の企業である被告の提供するオンライン上の支払いプラットフォームを利用して、カリフォルニア州の小売業者から商品を購入した際、被告に違法に個人情報を取得されたとして、同州北地区の連邦地方裁判所においてクラスアクションを提起した事案です。本事案では、同裁判所がカナダ籍の被告に対して人的管轄権(personal jurisdiction)を有するかが争点となりました。原審は人的管轄権を否定したところ、第9巡回区控訴裁判所も、被告の提供するウェブサービスが米国全土において等しく利用可能であるならば、特定の地区で当該ウェブサービスが利用可能であったというだけでは人的管轄権を基礎づける要素としては足りず、被告が当該地区の顧客を他より優先したなどといった、「何らかの追加要素」(“something more”)が必要であるとして、原審の判断を維持しました。各判決の詳細については本ブログのリンク先をご覧ください。
News
[M&A案件]
コビントンが、ルネサステクノロジーを代理して、米ソフト会社のアルティウムの買収(約91億豪ドル(約9000億円))に関与した案件が公表されました。コビントンチームは、CFIUS等投資規制分野で全米屈指と評されるMark Plotkinが率いています。
[EU競争法及びFDIチームが拡充されました]
GCRの “40 under 40” global foreign investment control counsel 等に選出されているRoss EvansがForeign Direct Investment Regulationプラクティスに、ダウ・ケミカルとデュポンの合併などハイプロファイルな案件を担当したAnna LubbergerがEU競争法プラクティスに加わりました。
[Jim O’Connellのインタビューが2月19日付日経新聞に掲載されました]
Antitrust プラクティスのパートナーJim O’Connellが昨年12月公表された合併ガイドラインについてコメントしています。
[「米国におけるメタバースと法に関する動向」
を執筆しました] アンダーソン・毛利・友常法律事務所が、メタバース特有の法的問題を解説した「メタバースと法」が2月に出版されました。コビントンのPhil Hill及びEmily Pehrssonが「第7章 第1節 米国におけるメタバースと法に関する動向」を執筆しています。
[Global Merger Enforcement Portalが始動しました]
Global Merger に関する最新情報を集めたPortalが始動しました。 US Merger Guideline の改正やthe EU Foreign Subsidies Regulation の適用開始など大きな動きが相次いでいるエリアですので、最新の情報を把握するためぜひご活用ください。
Webinars
弊所主催Webinarは、参加のご登録をいただくと後日録画をご視聴いただけます(オフレコのWebinarを除く)。参加の難しい時間帯のWebinarもぜひご検討ください。
[U.S.-China Trade Relations in 2024] Wednesday, March 06, 2024, 2 p.m. Central European Time. The American Chamber of Commerce in Germany との共催で、米中関係、特にCommercial Business Challenges in China; Trade and Investment; and Potential 2024 Elections Impactについて議論します。
[Middle East Data Privacy Update] Thursday, March 21, 2024, 12 p.m. Central European Time. 中東データプライバシーのスペシャリストであるJulie Teperowが、急速に発展する中東におけるデータプライバシー規制について解説します。
[3-part webinar series Emerging Supply Chain and Cybersecurity Requirements for U.S. Government Contractors] Session 3: Cyber Incident Disclosure Obligations: Wednesday, April 17 | 1 - 2 p.m. ET
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