コビントン・バーリング法律事務所より、7月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
- 米国における通商・関税詐欺執行の強化―企業が押さえておくべき5つのポイント
- 米国最高裁判決がFTC・CPSCの独立性に与える影響
- EU強制労働製品禁止規則ガイドライン公表―企業が押さえるべきポイント
- 1260Hリストの更新がバイオテクノロジー企業に与える影響
- トランプ政権、量子技術に関する2つの大統領令を公表
- 英国雇用権利法による不当解雇規制の強化―企業が今から対応すべきポイント
- 政府契約企業に対する議会調査の強化と留意点
- 米国における私的整理に関する現状と傾向
Pick Up
[米国/ホワイトカラー犯罪/通商・関税]
米国における通商・関税詐欺執行の強化―企業が押さえておくべき5つのポイント
Trade and Customs Fraud Enforcement: Five Things Clients Need to Know
本稿では、近年強化されている米国政府による通商・関税詐欺(trade and customs fraud)の執行について解説しています。米国司法省(Department of Justice:DOJ)は、関税逃れを含む通商・関税詐欺を重点執行分野に位置付け、税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection:CBP)等と連携して取締りを強化しています。また、内部通報者報奨制度の対象にも一定額以上の通商・関税詐欺を追加しており、企業に対する摘発リスクは高まっています。
具体的には、関税分類の誤り、輸入申告価格の過少申告、原産国の誤認等が確認された場合、企業や従業員の認識次第では詐欺として責任を追及される可能性があります。このような場合、政府はFalse Claims Actに基づき、未納関税額の最大3倍に相当する損害賠償等を求めることができます。こうしたリスクを軽減するために、企業は、必要に応じて外部弁護士を起用の上、関税コンプライアンス体制を見直すことが重要となります。
また、事前開示(prior disclosure)や当局からの照会への対応が、税関当局やDOJによる調査の端緒となる可能性があること、また、自主的報告(voluntary disclosure)、当局調査への全面的な協力および適切な是正措置を講じた場合には、DOJによる起訴が見送られる可能性があることから、企業は貿易コンプライアンス上の問題や内部通報を認識した段階で、早期に外部弁護士を起用して事実調査および対応方針の検討を行うことが重要となります。
[米国/消費者保護・製品安全規制]
米国最高裁判決がFTC・CPSCの独立性に与える影響
Supreme Court Holds FTC Removal Protections Unconstitutional
The CPSC Under Presidential Control: Implications of Trump v. Slaughter
ここでは、2026年6月の米国最高裁判決(Trump v. Slaughter)の内容を解説する記事と、その判決が消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission:CPSC)に与える影響を分析する記事を取り上げています。最高裁は、大統領による連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)委員に対する解任制限を違憲と判断し、大統領は、FTC委員を自由に解任できるとしました。この判断は、独立規制機関の独立性を支えてきた従来の考え方に大きな影響を与えるものとされています。
また、CPSCへの影響を分析する記事では、FTC委員の解任保護を違憲とした今回の判決が、CPSC委員に認められている類似の解任保護についても違憲であるとの見解に新たな根拠を与える可能性があると指摘しています。その結果、FTCやCPSCを含む規制当局の執行方針や優先事項が、従来以上に政権の政策方針を反映する可能性があります。さらに、企業が規制動向を把握する上では、各規制当局だけでなく、ホワイトハウスや行政管理予算局(Office of Management and Budget)、司法省(Department of Justice)を含む行政部門全体の動向にも目を配ることが重要になります。
今回の最高裁判決を契機として、米国における消費者保護規制や製品安全規制が今後より政治的な影響を受けやすくなる可能性があることから、企業としても規制当局の執行姿勢や政策動向を継続的にモニタリングしていくことがより重要になると考えられます。
[EU/人権・サプライチェーン/強制労働規制]
EU強制労働製品禁止規則ガイドライン公表―企業が押さえるべきポイント
European Commission Publishes Forced Labour Regulation Guidelines: Key Takeaways for Companies
本稿では、欧州委員会(European Commission)が2026年6月に公表したEU強制労働製品禁止規則(Forced Labour Regulation:FLR)の実施ガイドラインおよび関連ポータルサイトについて解説しています。FLRは2027年12月から適用が開始され、強制労働によって製造された製品について、EU市場での販売やEUからの輸出を禁止するものです。
今回公表されたガイドラインでは、企業に対する調査・執行の考え方に加え、強制労働リスクに関するデューデリジェンスの方向性が示されています。特に、サプライチェーンにおける強制労働リスクの把握、取引先管理、是正措置、苦情処理メカニズムの整備等について、OECDガイドラインや国連ビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding Principles on Business and Human Rights)を踏まえた対応が推奨されています。
また、ガイドラインは、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(Corporate Sustainability Due Diligence Directive)との整合性を意識した内容となっており、人権デューデリジェンス体制を構築している企業にとっては、両制度を一体的に捉えた対応が重要になると考えられます。他方で、FLRでは製品レベルのトレーサビリティやサプライチェーンに関する証拠資料の提出が重視されるため、企業としては、リスク管理に加え、将来的な当局対応を見据えた記録・文書管理体制の整備も重要となります。
[米国/バイオテクノロジー/経済安全保障]
1260Hリストの更新がバイオテクノロジー企業に与える影響
What the Updated 1260H List Means for Biotechnology Procurement
本稿では、2026年6月8日に米国戦争省(Department of War:DoW)が公表した中国軍関連企業リスト(いわゆる「1260Hリスト」)のアップデートと、それに伴うBIOSECURE Actおよび2024会計年度国防権限法(National Defense Authorization Act:NDAA)第805条への影響について解説しています。今回のアップデートにより、中国のバイオ医薬品受託研究・製造企業であるWuXi AppTec Co., Ltd.(“WuXi AppTec”)が当該リストに追加されました。
BIOSECURE Actは、連邦政府機関による「懸念対象バイオテクノロジー企業(Biotechnology Company of Concern:BCOC)」からのバイオテクノロジー機器・サービスの調達等を制限する法律ですが、WuXi AppTecは、1260Hリストに掲載されたことにより、今後、米国行政管理予算局(Office of Management and Budget:OMB)からBCOCに指定される可能性が高いとされています。OMBによる対象企業リストの公表や関連ガイダンスの策定が予定されており、規制の詳細は今後明らかになる見込みです。
また、本稿は、2024会計年度NDAA第805条に基づく政府調達規制についても解説しています。当該規制は、1260Hリスト掲載企業およびその支配下企業を対象としており、2026年6月以降、米国戦争省によるこれらの企業からの物品・サービス・技術の調達を禁止し、2027年6月以降はこれらの企業が製造または開発した物品・サービスを含む調達にも制限を拡大する予定です。他方で、規制の具体的な適用範囲や実施方法については依然として不透明な部分が多く残されており、今後の規則制定やガイダンスの公表が注目されます。
[米国/量子技術/サイバーセキュリティ]
トランプ政権、量子技術に関する2つの大統領令を公表
Trump Administration Releases Two Executive Orders on Quantum
本稿では、2026年6月22日にトランプ政権が公表した量子技術に関する2つの大統領令(「Securing the Nation Against Advanced Cryptographic Attacks」および「Ushering in the Next Frontier of Quantum Innovation」)について解説しています。これらの大統領令は、米国の機微情報、重要インフラおよびデジタル経済の保護を図る(このトピックについては、こちらもご参照ください)とともに、量子技術分野における米国のイノベーションを加速させることを目的とするものです。
第1の大統領令は、量子コンピュータによって既存の暗号が解読されるリスクに対応するため、連邦政府における耐量子暗号(Post-Quantum Cryptography:PQC)への移行を加速する方針を示しています。具体的には、連邦政府機関のシステム移行期限(2030年12月31日)を設定するとともに、政府契約企業に対しても米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)のPQC関連基準への準拠を求める方向性を打ち出しています。また、重要インフラ事業者によるPQC移行計画の策定支援や、海外政府・業界団体によるNIST標準のPQCアルゴリズムの採用促進も盛り込まれています。
第2の大統領令は、量子コンピューティング、量子センシングおよび量子ネットワーク分野における米国の技術的優位性を強化するため、研究開発および商業化の促進を目指すものです。大規模量子コンピュータ開発に向けた官民連携の推進、量子分野の人材戦略の策定、信頼できるサプライチェーンの構築等を関係省庁に指示するとともに、同盟国・友好国との連携を通じた市場アクセスの確保も重視しています。さらに、この大統領令は、安全保障上のリスクへの対応も重視しており、米国連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation:FBI)長官に対し、量子情報科学技術(Quantum Information Science and Technology)に関するセキュリティ管理および対諜報体制の強化を求めています(関連するFBIの記事についてはこちらをご参照ください)。
[英国/労働法]
英国雇用権利法による不当解雇規制の強化―企業が今から対応すべきポイント
It’s a double (unfair dismissal) whammy for employers from the New Year – are you ready?
本稿では、2025年12月に成立した英国雇用権利法(Employment Rights Act 2025)に基づき、2027年1月1日以降、英国において不当解雇に関する保護を受けるための勤続要件が現行の2年から6か月に短縮されるとともに、補償金の法定上限が撤廃されることについて解説しています。これにより、入社後間もない従業員や高額報酬の上級役職者を含む、より広範な従業員が早期に不当解雇保護の対象となり、成績不振を理由とする解雇や整理解雇であっても高額請求につながるリスクが高まる可能性があります。
また、2026年7月1日以降に採用された従業員は、新制度の施行時点で6か月の勤続要件を満たす、または比較的早期に満たす可能性があるため、企業として対応を年末まで先送りするのは適当とはいえません。具体的には、試用期間の設計やタイミングの見直し、管理職に対する早期の問題把握・記録化に関するトレーニング、入社初期段階からの人事評定プロセスの強化、雇用契約、ハンドブック、雇用時の資料の確認等を進めることが重要になります。
[米国/政府調達・議会調査]
政府契約企業に対する議会調査の強化と留意点
Government Contractors Face Unique Risks Amid Growing Congressional Scrutiny
本稿では、近年強化されている米国議会による政府契約企業(government contractors)や補助金受給者(grantees)に対する監督・調査に関する留意点を解説しています。こうした調査は、従来から焦点が当てられている連邦資金の不正利用等の論点に加え、政治的・政策的な関心事項も対象としており、今後も継続する可能性があります。こうした中、政府契約企業等は、情報公開法(Freedom of Information Act)に基づく情報開示、政府機関に対する資料請求、文書保存義務、他の政府機関による調査との並行対応等を根拠とした調査を受けるリスクがあることに留意するべきです。また、ロビー活動、利益相反、過大請求、False Claims Act違反、データプライバシー、サイバーセキュリティ、サプライチェーン管理等の分野については、今後特に議会による監督の対象となる可能性があります。
こうした状況を踏まえ、政府契約企業等は、コンプライアンス体制や文書保存体制を改めて確認するとともに、議会調査を見据えたリスク評価を行うことが重要となります。
[米国/倒産・事業再生]
米国における私的整理に関する現状と傾向
The Uniform Assignment for Benefit of Creditors Act: Early Adoption and Emerging Trends
本稿では、2025年10月に統一法委員会(Uniform Law Commission)が公表した統一債権者利益譲渡法(Uniform Assignment for Benefit of Creditors Act:UABCA)と、その後の各州における採用動向について解説しています。UABCAは、州法上の清算手続である債権者利益のための譲渡(Assignment for the Benefit of Creditors:ABC)について、統一的な法的枠組みを整備することを目的とするものです。ユタ州、ネブラスカ州、アラバマ州、アリゾナ州およびアイオワ州がUABCAをほぼそのまま採用したほか、デラウェア州も既存制度との整合を図りつつ導入しています。
ABCは、財務的に困難な状況にある企業が資産を独立した受託者に譲渡し、当該受託者が資産を換価して債権者へ分配する州法上の清算手続です。一般に、企業倒産・清算の手法の中では、比較的迅速かつ低コストで実施できることが特徴とされています。他方で、これまでは州ごとに制度内容が大きく異なり、複数州にまたがる事業や資産を有する企業にとっては利用しづらい面もありました。
UABCAは、債権届出手続、受託者の権限、州際的な承認・協力の仕組み等について統一的なルールを設けることで、ABCの予見可能性や利便性の向上を目指しています。
日本企業にとっては、米国子会社や事業資産の整理・清算を検討する際、ABCが破産手続の代替策として活用しやすくなる可能性があります。他方で、州ごとの制度差異は依然として残るため、事業拠点や資産の所在州、契約上の準拠法・譲渡制限条項等を踏まえた個別の検討が引き続き重要となります。
[Aaron LewisがLos Angeles Times誌の選ぶ「Aerospace & Defense Visionaries」に選出されました] これは、南カリフォルニアの航空宇宙・防衛産業において、技術革新や国家安全保障分野の発展に貢献するリーダーを表彰するものです。Lewisは、米国司法省においてエリック・ホルダー司法長官の顧問を務めた後、ロサンゼルス連邦検察局(U.S. Attorney's Office)の国家安全保障部門で活躍しました。Covington復帰後は、航空宇宙・防衛分野をはじめとする企業に対し、米国司法省による調査、不正請求防止法(False Claims Act)案件、輸出管理・国家安全保障関連案件について幅広く助言しています。
Practice Spotlight — Aerospace, Defense, and National Security
日本では、防衛装備移転三原則の見直し等を受けて防衛産業への注目が高まっておりますが、それに伴い、防衛関連事業を取り巻く法規制やコンプライアンスへの対応が重要課題となっている企業も多いのではないでしょうか。ワシントンD.C.に本拠を置く最大級の法律事務所として、政府対応・規制対応を強みとするコビントンは、防衛事業に関連して生じる輸出管理、経済安全保障、政府調達、企業取引、紛争対応その他の論点について、関連プラクティスが連携しながら横断的なアドバイスを提供できる体制を整えております。特に輸出管理分野は今後ますます重要性が高まるものと予想されますが、弊所のInternational Tradeチームは、Chambers USAにおいて最高評価であるBand 1: The Eliteを獲得しており、多くの日系企業を含むグローバル企業に対し、輸出管理、経済制裁、投資規制その他の国際通商関連事項について助言を提供しております。また、Government ContractsチームもChambers USAにおいてBand 1: The Eliteの評価を受けており、防衛・政府調達分野に関する幅広い助言を提供しております。
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