コビントン・バーリング法律事務所より、6月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
- 外国輸入者への取締り強化を求める大統領令
- 米国通商代表部、強制労働に関する調査結果に基づく追加関税案を公表
- EUにおけるM&Aに大きな影響を与える新たな外資規制
- フロンティアAIによるサイバーリスクへの対処
- 米国、AIに関する新大統領令を発出
- ICC仲裁規則(2026)の発効
- EUにおけるBiotech Act II:産業バイオテクノロジー推進に向けた政策検討の動向
- 英国のオンライン安全規制:16歳未満のSNS禁止と最近の動向
[米国/輸出入管理]
外国輸入者への取締り強化を求める大統領令
New Executive Order Calls for Significant Customs Law Changes, Directs CBP to Crack Down on Foreign Importers and Enhance Penalties
本稿では、2026年6月3日に発出された大統領令「
Strengthening Customs Enforcement 」について解説しています。本大統領令は、輸入者(Importers of Record:IOR)に対する規制・執行の強化を目的とするものであり、特に米国外に本拠を有する輸入者に大きな影響が及ぶ可能性があります。
本大統領令の特徴として、外国輸入者(Foreign IOR)を定義した上で、当該輸入者に対してより厳格な要件の導入を米国国土安全保障省税関・国境取締局(U.S. Customs and Border Protection:CBP)に指示している点が挙げられます。具体的には、米国内資産やボンド要件の強化、外国輸入者による略式輸入(informal entry)手続の利用を不可とする方向の見直し等が今後の規則制定を通じて導入される見込みです。
さらに、本大統領令はすべての輸入者に対する取締り強化を求めており、制裁回避・過小申告等への優先的取締りが強調されています。ペナルティの減免についても、原則として少なくとも50%の負担を求める最低水準を設定する方向が示されています。
[米国/輸出入管理/サプライチェーン管理]
米国通商代表部、強制労働に関する調査結果に基づく追加関税案を公表
USTR Announces Findings and Calls for Comments in Section 301 Forced Labor Investigation
本稿では、2026年6月2日に米国通商代表部(the Office of the United States Trade Representative:USTR)が公表した、通商法(Trade Act of 1974)301条に基づく強制労働に関する調査の結果および追加関税案について解説しています。
今回の調査では、日本を含む60の対象国・地域のすべてについて、強制労働により製造された製品の輸入禁止措置が未導入または有効に執行されていないと認定されました。USTRはこれを根拠に、各国の規制枠組みや履行状況に応じて、10%または12.5%の追加関税を提案しており、日本は12.5%の追加関税の対象に含まれています。
この追加関税は、原則として広範な品目に適用される一方で、附属書により一定の品目について除外措置が設けられています。加えて、他の通商措置との関係では、既存の301条関税等と併存し得ることから、企業にとっては関税負担が増加する可能性があります。なお、関税率や対象品目等については、2026年7月6日までの意見募集を通じて見直される可能性があります。
本件は、サプライチェーン管理や関税リスク対応の重要性が一層高まっていることを示唆しています。
[EU/M&A/外資規制]
EUにおけるM&Aに大きな影響を与える新たな外資規制
New FDI Regs Signal Major Changes For M&A Deals In EU
本稿では、2026年5月19日に欧州議会で採択されたEUにおける外国投資審査規則の改正について解説しています。本改正は、2019年に成立した既存の枠組みを置き換えるものであり、EU域内の投資審査制度にとって大きな転換点となる見込みです。
大きな変更点は、これまで義務ではなかった投資審査制度について、すべての加盟国に導入を義務付けるとともに、軍民両用品、AI、半導体、重要原材料、エネルギー・輸送・デジタルインフラ等の分野を共通の最低審査対象と位置付ける点です。これにより、加盟国間の制度のばらつきを是正し、一層の調和が図られます。
また、外国投資の定義が拡大され、EU域内企業を経由した投資であっても、域外投資家が当該企業を支配している場合には審査対象となる点も重要です。
手続面では、一次審査期間(約45日)を含む二段階審査の導入など一定の調和が図られる一方、二次審査の期間上限が設けられていないなど、不確実性は引き続き残ります。
本改正により、EUにおけるクロスボーダーM&Aでは、投資審査がより重要な規制要素となり、複数国での届出対応やスケジュール管理の複雑化が想定されます。
[米国/AI/サイバーリスク]
フロンティアAIによるサイバーリスクへの対処
Eight Key Considerations for Lawyers Addressing Cyber Risks Posed by Frontier AI Models
本アラートは、フロンティアAIの進化に伴うサイバーセキュリティリスクの変化を踏まえ、企業が取るべき主に法務上の対応を整理しています。フロンティアAIの発展により、サイバー攻撃を実行するために必要な専門性や時間が大幅に低減される可能性があり、米国では管轄官庁を通じて、フロンティアAIの安全な開発およびサイバーセキュリティに関する政策対応が進められています。
このような状況の下、企業においては、フロンティアAIがもたらすリスクに適切に対応するための実務的な対応が求められます。まず、既存のリスク管理体制について、AIによるサイバーリスクに対応したものとなっているかを評価する必要があります。また、フロンティアAIは脆弱性の発見数を増加させるだけでなく、発見から悪用までの期間を短縮させる可能性があるため、既存の脆弱性管理プロセス(特定・修復・開示等)が、短期間に多数の脆弱性が発見される状況に対応可能かを検証することが重要です。
さらに、第三者およびサプライチェーンに関するリスク管理の重要性も高まっています。第三者からの脆弱性報告への対応体制に加え、第三者との契約において、適切な期間内での脆弱性の開示・修復を義務付ける条項が整備されているかを見直す必要があります。
開示の観点では、上場企業はサイバーリスクやインシデントに関する評価・開示プロセスを再検討し、AI関連リスクを適切に反映させることが求められます。また、AI導入に伴うガバナンスの整備も不可欠であり、AIに関するポリシーやアクセス管理等の統制を既存のリスク管理体制と統合していく必要があります。
総じて、企業には、AIがもたらす新たなサイバーリスクに対応しつつ、その利点を安全に活用するため、実務的かつ包括的な体制を整備することが求められています。
[米国/AI/安全保障]
米国、AIに関する新大統領令を発出
White House Releases Executive Order on Advanced AI Innovation and Security
2026年6月2日、ホワイトハウスは「Promoting Advanced Artificial Intelligence Innovation and Security」と題する大統領令を発出しました。本大統領令は、米国のAI分野におけるリーダーシップを強化しつつ、AIの高度化に伴う安全保障上のリスクに対応することを目的としています。本大統領令の主な内容は以下の二つです。
第一に、本大統領令は「高度なAI」による新たなサイバーリスクへの対応として、連邦政府に対しサイバーセキュリティ体制の強化に向けた一連の措置を指示しています。例えば、国家安全保障システム委員会(CNSS)および戦争省に対し、サイバー防御のための「適切かつ迅速な措置」を講ずるよう指示しています。また、米国サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)に対し、AIを活用した防御ツールを強化する連邦プログラムやサイバーセキュリティサービスを新設または拡充し、連邦機関、州・地方当局、および重要インフラ事業者に対するサイバーセキュリティツールおよびサービスへのアクセスを促進することを指示しています。さらに、財務省主導の下、ソフトウェアの脆弱性の発見、検証、修正およびパッチ配布を調整する「AIサイバーセキュリティ・クリアリングハウス」の設立を指示しています。
第二に、本大統領令は、最先端AIモデル(frontier models)の安全な開発に向け、政府と民間の協働のための枠組みを設け、一定の高性能モデルについては公開前に政府への限定的アクセスを提供する仕組みの構築を想定しています。もっとも、本枠組みはあくまで自主的なものとされ、強制力のあるライセンスや事前承認の要件として解釈されるべきではないことが強調されています。
[米国/仲裁]
ICC仲裁規則(2026)の発効
Leaning into Efficiency and Flexibility: The 2026 ICC Arbitration Rules
ICC仲裁規則(2026)が、2026年6月1日付で発効しました。既にICC仲裁条項を含む契約を締結している当事者が、同日以降に仲裁を開始した場合には、当該仲裁条項が同日以前に締結されたものであっても、明示的に旧版規則を指定していない限り、改定後の規則が適用されます。
この改訂は、国際仲裁手続の効率性の向上を主眼としています。これにより、従来必須であったTerms of Reference(ToR)が廃止され、その役割はケース・マネジメント・カンファレンス(CMC)に移行し、手続の早期段階で紛争の範囲とスケジュールが確定されることとなりました。また、新規則では、迅速な紛争解決を目的とする「高度迅速仲裁(HEAP)」が導入され、適用を選択した当事者は、初回CMCから3か月以内に単独仲裁人による最終裁定を得ることが可能となりました。
加えて、緊急仲裁制度の拡充と、ICC所長による仲裁管轄審理権限の明確化も図られています。さらに、明らかに理由のない請求や管轄外の主張については早期に却下を求める制度(early determination)が明文化され、仲裁手続の効率化に寄与する仕組みが整備されました。
地政学的緊張や不確実性の高まりにより、国際紛争解決の重要性は一層増しています。ご質問等ございましたら、コビントンの国際仲裁・紛争チームまでお問い合わせください。
[EU/バイオテクノロジー]
EUにおけるBiotech Act II:産業バイオテクノロジー推進に向けた政策検討の動向
EU Biotech Act II: One Week Remaining to Shape the Commission’s Approach
本稿では、EUが検討を進める「Biotech Act II」について解説しています。この法案は、産業バイオテクノロジーおよびバイオ製造の促進を目的とするものであり、化学、農業、食品、製造業等、幅広い分野に影響が及ぶ可能性があります。また、当該法案は、医療分野を中心とする先行のBiotech Act I(この内容についてはこちらをご参照ください)を補完するもので、非医療分野における産業用途を対象としています。特に、原料調達から商業化に至るバリューチェーン全体を視野に入れた横断的な枠組みの構築が検討されています。
対象分野としては、バイオ由来の化学品・材料、農業・アグリバイオ、食品・飼料、バイオ燃料等に加え、バイオベース原料の調達や製造プロセスも含まれる可能性があります。
さらに、現段階で検討されている措置として、規制手続の簡素化や規制の整合化、イノベーション促進の枠組みの拡充、投資促進およびスケールアップ支援等が挙げられます。
[英国/SNS規制]
英国のオンライン安全規制:16歳未満のSNS禁止と最近の動向
Online Safety in the UK: Social Media Ban for Under 16s and Other Recent Developments
本稿では、英国政府が2026年6月に公表した児童のオンライン利用規制を強化する方針について解説しています。この政策は、SNS利用規制やAI・デバイス規制を含む包括的な枠組みであり、英国のオンライン安全規制を大きく前進させるものです。
本政策の中核は、16歳未満の児童に対するSNS利用の禁止措置の導入と、有害とされる特定機能の制限です。対象となるのは、ユーザー間の交流や投稿機能を提供するプラットフォームです。一方、メッセージングサービスは対象外とされています。併せて、ライブ配信や見知らぬ相手とのコミュニケーション等の機能についても制限が導入され、これらはゲーム等を含むより広範なオンラインサービスに適用されます。
さらに、16~17歳についても一部の機能制限がデフォルトで適用されるほか、AI分野では、恋愛・性的関係を模擬するチャットボットについて18歳以上のみ利用可能という年齢制限が導入される方向が示されています。
これらの規制の実効性確保のため、政府は年齢確認(age assurance)の強化を重視しており、16歳以上かどうかを高度に検証する仕組みの導入や、規制当局Ofcomによる執行体制の強化が予定されています。
加えて、スマートフォン等において児童による性的画像の閲覧・共有を防止する機能の実装を企業に求める方向性も示されており、企業が対応しない場合には立法措置による義務化も検討されています。
[Chambers USA 2026 Guideにおいて69のプラクティスと225名の弁護士がランクインしました] International Trade, Privacy & Data Security, Corporate Crime & Investigations, Government Contracts, International Arbitration, Product Liability, Litigation といった分野で最高位のThe Eliteにランクインしたほか、Japan Practice共同代表の木本泰介もCorporate/M&A: Deals in Asia部門で6年連続となるBand1を受賞しました。
[競争法に関する係争案件を専門とするMark Simpsonがロンドンオフィスに加入しました] Simpsonは、カルテルに基づく損害賠償請求や支配的地位の濫用に関する請求など、英国裁判所における極めて重要な案件に数多く関与してきました。加えて、英国および欧州連合(EU)の競争当局による注目度の高い調査案件や、規制当局の決定に対する司法審査および上訴手続にも幅広く携わっています。
[7月15日に経団連会館にて行われるセミナー「日本経済および日本企業の成長に向けた投資・提携を実現するための競争法および関連投資規制の理解と活用」にパネリストとして参加します] コビントンの米国競争法の専門家Jim O’ConnellとCFIUS等投資規制の専門家Mark Plotkinがパネリストとして参加し、寡占市場における成長機会とチャレンジ、競合他社・サプライヤとの業務提携、海外M&A・ジョイントベンチャーにおける競争法・外国投資規制の勘所の各トピックにつき議論します。最新の情報に触れるまたとない機会と存じますので、ご興味がございましたらジャパンプラクティス代表木本 または担当イノウエまでお問い合わせください。
コビントンのトレードシークレット紛争対応チームは、$1.8 billionを超える秘密保持契約違反を巡る仲裁での全面勝訴、動画編集技術に関するトレードシークレットおよび著作権を巡る4年間の訴訟における有利な和解の獲得、さらに仮差止めの取得により相手方の株価を一夜で$2 billion以上下落させ、最終的に極めて有利な和解に至ったゲーム技術を巡るトレードシークレット紛争など、複雑かつ重大な案件において多数の実績を有しています。当チームは、トレードシークレット紛争の予防から、発生時の迅速な対応、さらには訴訟・仲裁における決定的な成果の獲得に至るまで、各段階において一貫したサポートを提供しており、具体的には、リスク管理体制の構築に加え、不正取得の疑いが生じた場合の迅速な調査および是正措置の実施、企業の事業戦略に即した訴訟戦略の立案・遂行(仮差止めや迅速なディスカバリー対応を含む)、さらには保険請求への対応など、関連する実務全般を包括的に支援しています
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