コビントン・バーリング法律事務所より、3月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) 近時の大統領令に関する主要動向のタイムライン
2) トランプ政権が中国・カナダ・メキシコに対して関税を発動
3) 第二次トランプ政権における追加関税と紛争リスク
4) テクノロジー政策に転換をもたらすトランプ政権の大統領令
5) カリフォルニア州のAIフロンティアワーキンググループが、AIの基盤モデル規制に関するレポートを公表
6) 欧州委員会がEU AI法に基づくAIリテラシー義務に関するガイダンスを提示
7) EU及び英国がロシア及びベラルーシに対する制裁を強化
8) 中国における知的財産権侵害調査の導入とグローバル企業への影響
9) 目前に迫るEDGAR Nextへの変更
Pick Up
[トランプ政権/大統領令/政府契約]
近時の大統領令に関する主要動向のタイムライン
Timeline of Key Developments Related to Recent Executive Actions as of March 26, 2025
弊所政府契約プラクティスグループでは、引き続き、第二次トランプ政権発足以降における、連邦政府請負業者等に影響を及ぼす可能性がある大統領令の動向をフォローしています。日本企業の皆さまにも、直接的あるいは間接的に少なからず影響を及ぼすものが多く含まれているかと思いますので、ぜひこちらをご参照頂ければと思います。本稿では、2025年3月26日までの主要な動向をまとめたタイムラインを5つのトピックに分けてご紹介しております。
[トランプ政権/関税/中国・カナダ・メキシコ]
トランプ政権が中国・カナダ・メキシコに対して関税を発動
Trump Administration Implements Canada and Mexico Tariffs and Increases Tariffs on China
2025年3月4日、トランプ大統領は、違法薬物や移民流入への対応が不十分であるとして、カナダ及びメキシコに対して25%(一部カナダのエネルギー製品は10%)の追加関税を発動しました。これらの関税は2月に署名された大統領令に基づくもので、発動は一時的に延期されていたものの、3月4日に発効しました。その後、3月5日にUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠する一部の自動車・部品について1か月の免除措置が発表され、さらに6日にはUSMCAに準拠する他の品目についても関税の一時停止が公表されました。カナダは1070億米ドル相当の報復関税を発表し、州政府による個別措置も取られています。メキシコも報復を予告しています。
中国に対しては、同国から米国へのフェンタニル流入への対応を理由として、同年2月から10%の関税が発動されていましたが、同年3月4日には新たな大統領令に基づき、関税が20%に引き上げられました。中国は対抗措置として、米国産農産品などに追加関税を課し、複数の米企業を制裁対象に指定しています。
米国時間4月2日には新たな関税措置が発表されるとの報道があり、それ以降もトランプ政権の動向を精査していく必要があるかと存じます。弊事務所も適宜アラートをアップデートする予定です。
[トランプ政権/関税/紛争リスク]
第二次トランプ政権における追加関税と紛争リスク
Trump 2.0 Tariffs and Commercial Disputes: Key Questions to Consider
トランプ政権による追加関税及びさらなる関税導入のリスクは、単なる貿易上の問題にとどまらず、企業間取引における紛争リスクを高めています。既存契約の見直しや新たな契約交渉にあたり、自社の利益を守り、潜在的な紛争やサプライチェーンの混乱を最小限に抑えるための戦略的措置を講じる必要が高まっています。
本稿では、取引上の紛争リスクを評価・軽減するために重要な4つの観点(①製品の関税適用可能性、②契約上の関税リスクの分担、③関税による履行不能リスク、④権利行使・紛争解決方法)について解説しています。
[トランプ政権/テクノロジー/AI]
テクノロジー政策に転換をもたらすトランプ政権の大統領令
Flurry of Trump Administration Executive Orders Shakes Up Tech Policy, Creates Industry Opportunities
トランプ政権は、AI、コネクテッドカー、ドローン、通商等、テック分野の政策に関わる大統領令を複数公表しています。これらの中には、連邦政府機関に対して、テック政策の次のステップの検討を求めるものも含まれており、関係事業者においては、連邦政府機関に対してその意見を提出し、テック政策の決定プロセスに間接的に関与することも有益だといえます。例えば、2025年1月20日に公表されたアメリカファースト通商政策メモランダム(America First Trade Policy memorandum)は、連邦政府機関に対して、コネクテッドカー、中国に対する知的財産権政策、対外投資規制等について、前政権の政策の是非を検討することを求めています。本稿では、関係事業者において、パブリックコメントを提出することを検討すべき事項について解説しています。
[米国/AI/テクノロジー]
カリフォルニア州のAIフロンティアワーキンググループが、AIの基盤モデル規制に関するレポートを公表
California Frontier AI Working Group Issues Report on Foundation Model Regulation
2025年3月18日、カリフォルニア州のAIフロンティアモデルに関するワーキンググループが、AIの基盤モデル規制に関するレポートを公表しました。同レポートは、基盤モデルに対して、透明性、第三者によるリスク評価、内部告発者保護、有害事象の報告等の規制を課すことを提唱しています。AIの基盤モデルについては、カリフォルニア州の他、コロラド州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、バーモンド州においても、これを規制する法案の検討が進められており、引き続き注視が必要だといえます。本稿では、上記レポートが提唱する規制の内容について解説しています。
[欧州/AI/テクノロジー]
欧州委員会がEU AI法に基づくAIリテラシー義務に関するガイダンスを提示
European Commission Provides Guidance on AI Literacy Requirement under the EU AI Act
2025年2月2日、EU AI法の一部の規定の適用が開始されました。具体的には、禁止されるAIプラクティスに関するルール(不利益取扱いに繋がるソーシャルスコアリング等を禁止するもの)、AIリテラシーに関するルール(AI開発者・利用者に、その従業者等に対するAIリテラシーの教育等を求めるもの)の適用が開始されています。EU AI法は、EU市場にAIシステムを提供する事業者等、EU域外に所在する事業者に対しても域外適用され、また、その違反に対しては高額の制裁金が課され得る(例えば、禁止されるAIプラクティスに関するルールの違反に対しては、前会計年度における世界全体における売上総額の7%か3,500万ユーロのいずれか高い金額が上限)ため、日本企業においても注視が必要だといえます。欧州委員会は、現時点までに、禁止されるAIプラクティスについて解説するガイドライン、EU AI法の規律の対象となるAIシステムの定義を解説するガイドライン、AIリテラシーに関する実例をまとめた資料集を公表しています。また、欧州委員会は、2025年2月20日に開催したセミナーにおいて、AIリテラシーを確保するための万全・画一的なアプローチは存在しないとして、従業者等の能力やAIシステムの利用用途等にあわせて教育等を実施すべきと説明しています。本稿では、欧州委員会が開催したセミナーの内容も踏まえ、EU AI法に基づくAIリテラシー義務について、解説しています。
[EU/英国/経済制裁/ロシア]
EU及び英国がロシア及びベラルーシに対する制裁を強化
New EU and UK Sanctions Targeting Russia and Belarus
2025年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻から3年を迎えるにあたり、EU及び英国は対ロシア・ベラルーシ制裁を強化しました。
EUは第16次制裁パッケージを採択し、ロシア関連の輸出入及びサービス提供の追加禁止、資産凍結指定の追加、クリミアや占領下地域への規制強化などを実施しました。また、EU企業に対して、海外子会社が制裁対象者と取引を行わないよう最善の努力義務を課しています。ベラルーシについても同様に制裁対象が拡大されています。
英国も107件の資産凍結指定を行い、中央アジア、中国、インド、トルコ、タイなど第三国の企業・個人も対象としています。
[中国/知的財産]
中国における知的財産権侵害調査の導入とグローバル企業への影響
Chinas Emerging Section 337 Investigation Implications for Multinational Companies
2025年3月19日、中国国務院は、渉外知的財産権紛争処理規定を公布しました(5月1日施行)。この規定は、中国における外国関連の知的財産紛争を広く規定するものですが、その中でも、同規定14条が定める中国政府による輸入品への知的財産権侵害調査が特に注目されています。これは、知的財産権侵害輸入品を標的とする米国のセクション337調査に類似した制度となる可能性があり、今後の実施状況に注目が集まります。本稿では、このような中国の新たな知的財産権侵害調査制度がグローバル企業に与える影響、その対応について検討しております。
[米国/証券取引委員会/EDGAR/電子開示システム]
目前に迫るEDGAR Nextへの変更
EDGAR Next is Right Around the Corner: What You Need to Know Now
2024年9月27日、米国証券取引委員会(the U.S. Securities and Exchange Commission:SEC)は、連邦証券法に基づく開示書類に関する電子開示システムであるEDGAR(Electronic Data Gathering, Analysis, and Retrieval system、日本のEDINETに相当)に関する大きな変更を実施しました。SECは、EDGARのセキュリティを向上させ、提出者によるアカウントの管理機能を強化するために、システムを変更しており、この変更は総称して「EDGAR Next」と呼ばれています。このような変更に伴い、上場会社やSECへ各種届出を行っていた企業は、EDGARアカウントの更新を行う必要があります。本稿では、EDGAR Nextに関する専門用語や、アカウントの更新に関して知っておくべき手順を解説します。
ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
News
[Life Sciences Symposiumがボストンで開催されます] European Life Sciences Symposium、Bay Area Life Sciences Symposiumに続き、5月1日にBoston Life Sciences Symposiumが開催されます。下記トピックのとおり、最新情報を入手するまたとない機会ですので、ボストン近郊の皆様にぜひお知らせください。
- Biology’s Century: How Will Regulation Keep Up? Featuring Amy Abernethy, Co-founder, Highlander Health
- First 100 Days of the New Administration
- Corporate Deal Trends: A Look at the M&A, Licensing and Financing Landscape in 2025
- Cybersecurity: Recent Trends and What’s Next
- Regulation in Flux: What Comes Next for Diagnostics?
- Shifting Enforcement Priorities: What Should Life Sciences Companies Expect?
[EU 競争法及び訴訟プラクティスが拡充されました] 2024年まで欧州司法裁判所(CJEU)判事を務めたNils Wahlがブリュッセルオフィスに加入しました。Wahlはスウェーデン競争当局のindependent research councilを務めた経験もあり、EUにおける競争法及び訴訟プラクティスがさらに拡充されます。
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Navigating State AG Privacy Enforcement and Emerging Trends
April 30, 2025 | 3pm-4pm EST
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