コビントン・バーリング法律事務所より、7月に配信したニュースやブログ記事等をまとめてお送りします。
今月のPick Up記事は下記になります。
1) トランプ政権による通商拡大法232条措置の最新動向
2) EUがロシア・ベラルーシに対する追加制裁を導入
3)「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」による主要な税制改正
4) トランプ政権がAIアクションプラン及びAI大統領令を発表
5) 新EU消費者保護法(デジタル公正法)の意見公募手続の開始
6) 欧州委員会が初のEU宇宙法案を発表
7) GENIUS法が成立:連邦ステーブルコインの規制枠組み
8) IRA選定薬の「最大公正価格(MFP)」適用開始に向けた対応と今後の
留意点
Pick Up
[米国/第二次トランプ政権/関税]
トランプ政権による通商拡大法232条措置の最新動向
Status of Section 232 Actions by the Trump Administration
第二次トランプ政権では、1962年通商拡大法232条(安全保障を理由とする輸入制限)に基づき、鉄鋼・アルミニウム及び自動車・同部品に対する関税措置を拡充しました。鉄鋼・アルミニウムについて、関税率を50%に引き上げるとともに、英国に対しては25%とする例外も設けています。また、自動車・同部品については、一定の要件を満たす米国メーカーに対してタックスクレジットを付与することで、関税分を一部相殺する仕組みも導入されました。
1962年通商拡大法232条に基づく調査は、銅、木材・製材、半導体・半導体製造装置、医薬品・医薬品原料、トラック、加工重要鉱物・派生製品、商用航空機・ジェットエンジン、ポリシリコン・派生製品及び無人航空機システム・部品の分野でも行われており、今後も追加関税が発表される見通しです。
[EU・英国/ロシア/経済制裁]
EUがロシア・ベラルーシに対する追加制裁を導入
EU Imposes Additional Sanctions Against Russia and Belarus; EU and UK Agree to Tightening of Russian Oil Price Cap
EU理事会は2025年7月18日、第18次対ロシア経済制裁パッケージを採択し、原油輸送・金融・軍事・工業関連の幅広い分野に新たな制限を導入しました。
特に注目すべきは、ロシア産原油に対するプライスキャップの引き下げであり、現行の1バレル60ドルから47.6ドルに引き下げる措置が講じられています(英国も同様)。また、第三国企業による制裁迂回行為に対応するため、中国・UAE・インド企業を含む複数のエンティティが資産凍結対象に追加されました。さらに、ロシア産原油から精製された非ロシア産石油製品の禁輸措置や、SPFS(ロシア版SWIFT)利用企業への制裁権限拡大も含まれています。同日には、対ベラルーシ制裁も強化され、ロシア制裁との整合性が図られています。
[米国/税制改正/EV・クリーンエネルギー]
「One Big Beautiful Bill Act (OBBBA)」による主要な税制改正
Key Provisions of the One Big Beautiful Bill Act
2025年7月4日、「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」が成立しました。本法は2017年税制改革法(TCJA)の多くの時限措置を延長する一方で、クリーンエネルギー税額控除を一部制限するなど、税制に関する大規模な改正法です。主な改正点は、①一般的な事業に関係する改正(特定の事業用資産の全額償却、適格製造用資産の全額償却、国内研究開発費用の全額償却、事業利子控除の制限、過大な従業員報酬に対する控除の制限など)、②クロスボーダー取引に関係する改正(外国源泉無形資産所得規則の変更、グローバル無形低課税所得規則の変更、米国内製造在庫の販売源泉規則の変更など)、③不動産に関係する改正(オポチュニティ・ゾーンへの投資に対する税制優遇措置の変更、REIT子会社証券の保有上限引上げなど)、④非課税法人に関する改正(法人による寄附控除の制限など)、⑤クリーンエネルギーに関係する改正(クリーンエネルギー税額控除の一部短縮、禁止外国法人による重大な支援を受ける者に対する制限、個人・企業向けEV税額控除の廃止など)、⑥その他の改正(残業手当の一部非課税化、チップ収入の一部非課税化などに分類されます。
米国で事業を営む日系企業の皆さまに対して多大な影響を及ぼすのはもちろん、そうでない場合であっても、例えば、米国の納税者が、中国法人等の禁止外国法人(prohibited foreign entity)から重大な支援を受けている場合、エネルギー税額控除に制限が課されることになるところ、日本企業も米国のメーカーからサプライチェーンの見直しを求められる可能性もあり注意が必要です。
本クライアントアラートでは、OBBBAの概要について解説しています。
[米国/AI/テクノロジー]
トランプ政権がAIアクションプラン及びAI大統領令を発表
Trump Administration Issues AI Action Plan and Series of AI Executive Orders
2025年7月23日、ホワイトハウスは、トランプ政権のAI政策アジェンダにおける優先事項を概説する「AIアクションプラン」を発表しました。また同日、トランプ大統領は、AIアクションプランを実行するための3つの大統領令にも署名しています。AIアクションプランは、①AIイノベーションの加速、②AIインフラ構築、③国際的なAIに関する外交及び安全保障の主導を3つの柱として、連邦政府が実行する103のアクションを示しています。3つの大統領令は、これらのアクションプランを実行することを目的としており、具体的にはそれぞれ、①連邦政府におけるイデオロギー的に「中立な」(Preventing Woke)AIモデルの調達、②データセンターインフラの連邦許認可の迅速化、③米国製のAI技術パッケージの輸出促進の実現に向けて必要な措置を、連邦政府の各組織に要求しています。本稿では、AIアクションプラン及び3つの大統領令の重要ポイントについて解説しています。
[EU/消費者法/デジタル公正法]
新EU消費者保護法(デジタル公正法)の意見公募手続の開始
Help Shape the New EU Consumer Protection Law: Join the Public Consultation on the Digital Fairness Act
2025年7月17日、欧州委員会は、その立案作業中の新たなEU消費者保護法である「デジタル公正法」(Digital Fairness Act:DFA)に関する意見公募手続を開始しました。欧州委員会は、デジタル空間における問題のあるプラクティスとして、ダークパターン、インフルエンサーマーケティング、アルゴリズムによる広告及び価格の調整、サブスクリプション契約、AIチャットボット等をあげ、これに対する規制の在り方について意見を募集しています(期限は2025年10月9日まで)。欧州委員会は、2026年第3四半期にはDFAの草案を発表する予定です。欧州委員会が問題視するプラクティス、DFAの規制の方向性等については、DFAについて解説した連載記事(第1回:インフルエンサーマーケティング、第2回:AIチャットボット、第3回:アルゴリズムで調整された広告及び価格)をご参照下さい。
[EU/宇宙/テクノロジー]
欧州委員会が初のEU宇宙法案を発表
The European Commission announces a proposal for the first EU Space Act
2025年6月25日、欧州委員会は、「EUにおける宇宙活動の安全性、レジリエンス、持続可能性に関する規則」(Regulation on the safety, resilience, and sustainability of space activities in the EU:EUSA)の草案を公表しました。この規則案は、宇宙サービス(人口物体の宇宙への打ち上げ・運用サービス、宇宙由来の通信・観測データの一次的な処理サービス等)の提供者に対して義務を課すものです。既に欧州においては、13の加盟国が宇宙活動に関する独自の国内法を整備しているところ、EUSAは、①宇宙サービス提供者に対する認可・登録要件、②宇宙サービスの安全性に関する義務、③セキュリティ・レジリエンスに関する義務、④環境持続可能性に関する義務を定めることで、EU内における法制度の調和を図ることを意図しています。EUSAは、基本的には、欧州域内に所在する宇宙サービス提供者を対象としていますが、一部の規律は欧州域外の事業者に対しても域外適用されることとなっているため、日本企業においても留意が必要だといえます。
[米国/金融サービス/ステーブルコイン]
GENIUS法が成立:連邦ステーブルコインの規制枠組み
The GENIUS Act Becomes Law: Key Provisions from the Federal Stablecoin Regulatory Framework
2025年7月18日、「米国ステーブルコインの国家的イノベーション促進・確立法」(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act:GENIUS法)が成立しました。本法は、決済用ステーブルコインおよびその発行者に対するライセンスと監督の仕組みを新たに創設するものです。同法の下、連邦政府又は州政府が承認した特定の団体のみが決済用ステーブルコインを発行できることとなります。米国外のステーブルコイン発行者については、①財務長官が、同事業者の所在する国の規制当局がGENIUS法の枠組みに匹敵する規制・監督体制を有していると判断し、かつ、②通貨監督庁(OCC)への登録及び米国金融機関での準備金の維持等のGENIUS法のライセンス及びコンプライアンス要件を満たす場合には、米国内で決済用ステーブルコインを発行することが可能です。本稿では、GENIUS法の規制枠組み等について解説しています。
[米国/ヘルスケア]
IRA選定薬の「最大公正価格(MFP)」適用開始に向けた対応と今後の留意点
Countdown to IRA Pricing: Updates and Next Steps for Maximum Fair Price Effectuation
インフレ抑制法(IRA)に基づき、メディケア対象の選定薬品に対する「最大公正価格(MFP)」が2026年1月1日より初めて適用されます。対象となる薬品を扱う製薬企業は、MFPの運用計画を9月1日までにCMSに提出する必要があります。Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)は、MFPの実施に関する多数のガイダンスを公表してきました。本クライアントアラートでは、近時のCMSによるアップデート及びMFPの実施に向けた今後のステップを概説します。
ご不明な点やより詳しい情報の入手等のご要望がございましたら、ジャパンプラクティス代表木本までご連絡ください。
News
[米国財務省外国資産管理局(OFAC)元局長Adam SzubinがCovingtonに加入しました] Szubinは13年にわたる米国財務省での経験を活かし、米国国家安全保障、特に経済制裁、金融制裁、マネーロンダリング規制、輸出入管理等につき戦略的なアドバイスを提供します。
[米国連邦取引委員会(FTC) 競争局元局長Henry LiuがAntitrust グループ共同代表として復帰しました] FTC在職中、Liuは独占禁止法の執行を担当し、彼のリーダーシップの下、同局は数百件の審査を行い、40件を超える第2次情報請求をし、20件近い執行措置を執りました。Liuによる最新トレンドの解説 “Top 3 Antitrust Enforcement Trends in the U.S.” (2分40秒)はこちらからご覧いただけます。
[Business Insurance 誌のLegal Team of the Year に選出されました] コビントンの保険請求(Insurance Recovery) グループは全米最優秀かつ最大と評されており、今年度も数多くのクライアントに勝訴判決と有利な和解を勝ち取っています。
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